第2話 男の子の特有の病気。

「まあ!! リヒト様はクリスに嫉妬なさってたの? 」

ロゼリンは嬉しそうに声を弾ませ、リヒトとリリシアの間に入り込む。


「そうならそうと、おっしゃってくださればいいのに。」

グイグイとリリシアとの距離をとらすように入り込む。そこにすかさずクリストスは他のテーブルの椅子を持って来て、リヒトとリリシアの間に二つ置いた。


「どうぞ、ロゼリン様。」

「ありがとう、クリストス。」

椅子をロゼリンに進める。ちゃっかりクリスもロゼリンの傍に座っている。


「ええ、確かにクリスとは何時も一緒にいますわ。でも、クリスは家族ですのよ。」

「そうです、既に家族です。」

ロゼリンの言葉に、クリストスも同意する。


「一緒に散歩をしたり、一緒に食事をしたり、たまにお風呂に一緒に入って洗ってあげて、何時も一緒にベットで眠っていますけど、家族ですもの。」

「はい、家族ですから当然です。」

クリストスは同意する。 


「ふ、ふん。家族でも一緒に風呂に入ったり、一緒に寝るのはどうかと思うぞ。」

リヒトは忠犬を睨みながら、ロゼリンをたしなめた。


「度量がない。」

「何だと!! 」 

クリストスの言葉に、リヒトは直ぐに反応する。


「子供の頃からですので、今更ですわ。」

ニコニコと、応える。


「ふ、ふん。俺だって、昨日リリーとベットを共にした。その前も、その前の日も、今日も一緒に寝るつもりだ!! 」

リヒトは立ち上がり、鼻息荒く言い放った。


「俺の腕枕で可愛い寝息をたてていたし。俺を見つめて、可愛い声で鳴いてくれる。」

「なんですって!! 」

ロゼリンも、立ち上がった。


「朝はおはようのキスをして、夜はおやすみのキスをしたぞ。」 

「酷いですわ、リヒト様!! あんまりですわ!! 」

ロゼリンはリリシアの方を睨むと、叫んだ。


「この、泥棒猫!! リヒト様との私の時間を返しなさい!! 」

「はん、お前がそこの忠犬にかけた時間よりかは、少ないわ!! 」

リヒトは忠犬を指差した。


「大人げない。」

「何だと!! 」

クリストスは冷たい目で、リヒトを見つめた。


「とにかく、俺にはもうリリーがいる。お前なんて、必要…… 無いんだからな!! 」

「馬鹿ですね。」

「何だと!! 」

リヒトの言葉に呆れた目を向けるクリストス。王太子とマデリーン公爵令嬢も、やれやれと頭を抱える。リリシア一人がオロオロと、助けを求めてクリストスを見た。

 

「酷いですわ、泥棒猫の猫なで声にころっと騙されたのですわ。」

「リリーを泥棒猫と、言うな!! リリーは、寂しい俺を慰めてくれたんだ!! 」

リヒトはリリシアの方を向いた。


「お前は、その忠犬に甘えていたし、頼りにしていたではないか。だから、俺は…… 」

リヒトは唇を噛んだ。


「クリスは家族ですわ。私の騎士ですわ、忠犬なんて言わないで、くださいませ!! 」

ぽろぽろとロゼリンは、涙を流した。


「餓鬼か。」

「何だと!! 」

クリストスの言葉に、素早く反応する。


「ロゼリン様、泣かないでください。リヒト様は、子供心を拗らせているだけです。」

そっと、ハンカチをクリストスは差し出した。


「リヒト様は病気ですので、気に病むことはありません。」

「リヒト様は、病気なの? 」

ロゼリンはハンカチで、チーンと鼻をかんだ。


「ええ、男の子が幼少期にかかる特有な病気なのです。」

「俺は病気ではない!! 」

クリストスの言葉をリヒトは、否定した。


「いえ、病気ですよ。好きな子に構って欲しくて意地悪をする。」

「ああ、あれか…… 」

「まあ、ふふっ。お子様なのですね、グランツ様は。」

王太子と公爵令嬢は温かい目で、リヒトを見る。


「ち、違う!! 俺は!! 」

真っ赤になってリヒトは否定するが、説得力はなかった。


「俺は、リリーを愛してる。リリーは、俺を慰めて優しく寄り添ってくれる。お前がその忠犬と戯れてる時、俺がどんなに寂しか、違う!! リリーさえいれば、もうどうでもいい。」

リヒトは大人げなく叫んでいる。


「お前は、その忠犬と戯れてればいい。俺には、リリーがいる。」

リヒトは席から離れ、リリシアの方へ向かった。

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