泥棒猫VS忠犬。

❄️冬は つとめて

第1話 現れた女生徒。

卒園式が終わって、ある日のうららかな午後。中庭のテーブルを囲んで会話を楽しんでいる男女の処に、一人の女生徒がお供を連れて現れた。


「ごきげんよう、リヒト・フォン・グランツ様。」

ラ・リーヴ学園の紺のブレザーを着た、栗毛の髪と少しつり上がった青い瞳の女生徒はテーブルを囲む一人の男子生徒に声をかけた。


「ロゼリン・フォン・サンチェス。」

声をあげたのは、ロゼリン・フォン・サンチェス侯爵令嬢の婚約者、一つ年上の二年のリヒト・フォン・グランツ侯爵令息であった。赤毛のくせ毛のリヒトは、緑の瞳を嫌そうに婚約者に向ける。


「あら、もご一緒ですわ。」

ロゼリンが言うと、テーブルに座っていた淡い茶色の髪の女生徒がビクンと体を震わせた。彼女はリリシア・マテック子爵令嬢、マテック子爵の庶子で最近まで市井で育ってきた娘であった。


「ロゼリン。リリーを、泥棒猫と呼ぶのはやめろ。」

リヒトは、きつい目でロゼリンを睨みつける。


「あら。泥棒猫を泥棒猫と言って、何が悪いのですか。」

ロゼリンは淑女の必需品、扇子を懐から取り出し開いた。


「そう思いませんこと。リリシア様。」

ロゼリンは、扇子で口元を隠して目を細めた。


「泥棒猫は、言い過ぎでは… ないかと…… 」

ビクビクと応える。


「そうだロゼリン。リリーに、謝れ。」

「あら、嫌ですわ。婚約者である私を放って置いて、その泥棒猫と仲睦まじくしているのはリヒト様でしょう。」

ツンと拗ねたように、顔を逸らす。


「まあ、それは頂けませんわ。」

擁護するように、テーブル席に座っているもう一人の女生徒が言った。流れる金髪と青い瞳の優しい面差しの女性、マデリーン・フォン・キャロル公爵令嬢はリヒトを見る。


「そうですわ。もっと言ってくださいませ。マデリーン様。」

ロゼリンは嬉しそうにテーブルに近づいた。


「でも、リリーに泥棒猫は言い過ぎですわ。」

にこりと微笑む。


「何時も王太子殿下と御一緒のマデリーン様には私の気持ちは、わかりませんわ。」

ぷーと、頬をロゼリンは膨らませた。

「まあ…… 」

マデリーンは妹でも見るようにロゼリンを見ると、隣に座っている王太子に目を向け頬を染めた。


「マデリーン。」

ミカエル・フォン・パーシュブラント王太子、黄金の髪とぽやんとした緑色の瞳を婚約者であるマデリーン公爵令嬢に向けた。

 

「リヒト、婚約者殿は大切にしないと。」

優しく微笑んだ。


「そうですわ。もっと言ってくださいませ、王太子殿下。」

ロゼリンはまたしても嬉しそうに、テーブルに近づいた。


「はん。俺がいなくても、そこのがいるからいいだろ。」

リヒトはロゼリンの後ろを見ると、吐き捨てるように言った。


「心が狭い。」 

「何だと!! 」

ロゼリンの後ろに控える男子生徒、クリストスは呟いた。


「まあ、忠犬ですって!! クリスは私の騎士ですわ。訂正して、くださいませ。」

ロゼリンはテーブルに手を付いて、リヒトに食って掛かる。


「子供の頃から私を守ってくださる、大切な騎士ですわ。最近出会った、そこのとは違いますわ。」 

「あ、ああん? 」

食い下がるロゼリンに、リヒト嫌な顔をした。


「幼き頃に拾われて、忠義を尽くしております。」

クリストスは、胸に手をあてて目を瞑った。


「そうですわ、クリスは私の心の友ですの。安心を与えてくださいますわ。」

「リリーは、俺に安らぎを与えてくれる。」

嬉しそうにクリスの話をするロゼリンに、リヒトは言い返した。


「なんですって!! 」

「お前だと、落ち着けないんだ。それに比べてリリーは、俺に安らぎを与えてくれる。可愛いし、柔らかいし。」

リヒトは隣に座るリリシアの太ももに手をのばした。


「はーぁ、柔らかい。癒やされるー。」

リヒトは手を動かし、なでた。


「酷いですわ、私の目の前で!! 」

「はん!! お前だって何時も俺の前で、忠犬に抱きついてるだろう!! 」

ロゼリンが責めると、リヒトは言い返した。


「嫉妬ですか。」

「何だと!! 」

クリストスの言葉に、リヒトは真っ赤になって怒鳴った。


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