第20話 エピローグ

あの頃のわたしは、誰かに言ってほしかった。

「それでも綺麗だよ」って。

見られるのが怖くて、見せることができなくて、

でもほんとうは、見てほしくて――。


世の中が、“マスクをつけているほうが普通”になって、

誰もが「隠すこと」に慣れてしまった頃。

わたしは、ずっと前からその中にいた気がする。


マスクをつければ、誰にも傷つけられずに済む。

でも、あの子が言ってくれた。

「誰かに好きって言われたいなら、自分のことを好きにならなきゃダメなんじゃない?」って。


その言葉に背中を押されて、

私は少しだけ、前に進めた気がする。


――あれから、あの人には会えていない。

きっとまた、どこかで、別の誰かの背中を押しているんだと思う。


だからこの想いは、ちゃんと心の中で伝える。

「ありがとう」って。

そして、

――「わたしは、もう大丈夫だよ」って。


これは、マスクの下に隠した“素直”を取り戻すための、ある女の子の物語。

そして、誰かの隠した想いをそっと支えた、もう一人の物語。

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マスクの下の素直 星野 暁 @sakananonakasa

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