『虫嫌いな私が転生したらカマキリでした』

星野 暁

第1話 虫嫌いの私、キャンプに誘われる(死亡フラグが立ちました。)

私の名前は佐倉ミユキ。どこにでもいる、普通のOL。

日々、デスクとパソコンに挟まれて社畜ライフを送っていたが、唯一の癒しは虫と無縁なオフィスの空調くらいだった。


そして、私は──虫が大嫌いだ。

いや、「苦手」とかそんなレベルじゃない。

目に入った瞬間に逃げ出し、近づかれたら泣く。羽音が聞こえたら過呼吸になる。あれらは地獄からの使者。地球の間違い。


なのに──なのにだ。

なぜ私は、今、山奥のキャンプ場にいるのだろうか?


「いや〜、たまには自然も良いでしょ?癒されるよ?」

「やっぱリフレッシュって必要だよね〜。あっ、虫よけスプレーは忘れずに〜!」


職場の同僚たちがキャッキャとはしゃぐ中、私は一人、テントの隅で腕を抱えて震えていた。

癒し? リフレッシュ? こちとら精神が擦り減っとんじゃい。


そんなときだった。


「ひっ……!? う、嘘でしょ……」

目の前を、何かが横切った。


──ムカデ。

ム・カ・デ。


「ぎゃあああああああああああああ!!!」

私は反射的に叫び、後ずさり……しようとしたが、すでに遅かった。

足を滑らせ、キャンプ場の裏手にある崖の方へ。


──あ、これ、落ちるやつだ。


視界がぐるりと反転し、空と木々がぐしゃぐしゃに混ざっていく。

最期に頭をよぎったのは、ムカデでもキャンプでもなく、冷えた缶ビールだった。


「……虫だけは、マジ無理……」


ガサッ──ドサッ──。

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