8,オサイ魔女会長
アリスがホウキから降りて魔女がホウキから離れると、ホウキはスーッとどこかへ飛んで行ってしまいました。
魔女はアリスの手を引っ張って、急いで建物の中に入っていきます。
中に入ると広いホールになっていて、中央には大きな丸い木のテーブルが置かれてあり、20人くらいの魔女達がテーブルの周りに座って、入ってきた二人に注目していました。
魔女はアリスの手を引っ張って、小走りにテーブルに向かって歩いて行きました。
アリスは戸惑いましたが、魔女に引っ張られるまま一緒についていきます。
すると一番奥の大きな椅子に座っていた大柄な年配の魔女が声をあげて言いました。
「サマンサさんまた遅刻ですか! これで何回目になりますか?」
サマンサと呼ばれた魔女は頭を下げて、
「多分20回は越えてると思いますオサイ会長」と魔女は答えます。
「あなたは今日の遅刻でまた1歳減歳になるわね。
折角100歳になって一人前の魔女になれたのに、これでまた学校に戻らなくてはいけないわね」
とオサイ会長と呼ばれた大柄な魔女は言い放ちます。
するとサマンサと呼ばれた魔女が、
「遅れて申し訳ありません、でも今日ばかりは仕方なかったのです。途中で思いがけないアクシデンドがあったものですから」
と急いで釈明します。
「アクシデント? どんな事ですか、単なる言い訳なら許しませんよ」
と厳しい口調でオサイ会長が言いました。
サマンサは振り返ってアリスの腕を引っ張って円テーブルの近くにやって来ると、アリスをみんなの前に押し出して言いました。
「来る途中でこの娘と遭遇したので、身元を調べていたため遅れてしまったのです」
オサイ会長はアリスをジロリと見ると冷たい口調で、
「あなた名前はなんていうの?」
とアリスに聞きました。
アリスは理由もなく叱られている気分になって、居心地の悪さを感じながら答えました。
「アリスです」
するとオサイ会長は、テーブルの上に立てて置かれたタブレットを操作しながら言いました、
「アリスね、しばらく待ってて」
しばらくしてからオサイ会長はタブレットから目をあげて言いました。
「アリスとやら、調べてみたけれどこの地区の魔女の名簿にはアリスと言う名前は無いね、もちろん魔女の家族の名前の中にも」
アリスは負けずに言い返します。
「だって私は魔女じゃないもん!」
これを聞いたオサイ会長はサマンサに向かって、
「サマンサ、なんでまた魔女でない人間の子供をここに連れてきたりしたのですか!」
と、かなりの剣幕でオサイ会長はサマンサを叱りつけます。
サマンサは慌てて前に進み出て、
「オサイ会長、違います、アリスは間違いなく魔女です。
私がこちらに向かって飛んでくるときに、「夜の国」でホウキも持たずに空を飛んでいるアリスに出会ったのです。
ですから魔女に間違いはありません」
と早口で言いました。
オサイ会長は、
「ホウキも持たずに空を飛んでいた? ホウキ無しで空を飛ぶためには魔女は1000歳にはならないとできない事だが、この娘とてもそんな年には見えないがね」
とオサイ会長は言うと、隣の魔女と何か言葉を交わしてアリスに尋ねました。
「アリス・・・さん、あなたは今何歳ですか?」
アリスはなんでそんなことを聞くのだろうと思いながら答えました。
「10才よ」
それを聞いた魔女たちは騒めきながら、またオサイ会長の周りに集まって話合いを始めました。
つづく
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