7,魔法の国

 グングンと境界線に近づいてその境界線を飛び越えると、一瞬で辺りは昼間の明るさになってしまいました。

 いきなりだったのでアリスは目がくらみましたが、すぐに明るさに慣れてアリスが後ろを振り返ってみると、今の明るい場所の向こう側には暗い場所があってやはり横一線の境界線になっていました。

 そして先程通り過ぎた線の上には標識が宙に浮いていて、青く光る文字で「これより先は夜の国」と書かれてありました。

 周りが明るくなったので今まではよく見えなかった魔女の姿がハッキリと見えます。 

 しがみついている魔女の服はお決まりの黒い服などではなく、薄いピンクのブラウスを着て、スカートではなくパラッツォパンツを穿いたとてもオシャレな恰好で、長い栗色の髪の毛を後ろになびかせて颯爽と空を飛んでいました。

「ねえ、魔女さんどこへ行くの?」

とアリスは気になっていたことを尋ねてみました。

「魔女の例会よ、月に一度魔女が集まる会があるのよ。もうすぐ着くから大人しくしてて」

と少しイライラした口調で魔女が言います。

「質問しただけなのに何故そんなに冷たく言われなきゃいけないの」

とアリスは思いましたが、だまって周りの景色を眺めていました。

 昼の国へ来てからは雲の中ばかり飛んでいましたので、雲以外はほどんど何も見えませんでした。

 ただ不思議なことに結構なスピードで二人は飛んでいるはずなのに、雲の塊はゆっくりとアリスたちの横を過ぎていきます、そしてその雲をよく見ると縁日の夜店で売っている綿菓子にそっくりなのです。

 アリスはそっと手を出して雲をひと切れつかみ取りました。

 見た目は普通の綿菓子です、試しにそっと口に入れてみました。

 口中に広がる甘さを期待していましたが、残念ながらなんの味もしませんでした。

 アリスはがっかりして言いました。

「食べきれないほどの綿菓子なのに残念ね」

 すると魔女がクスリと笑いながら言いました。

「面白い子、さあもうすぐ着くわよ」

 アリスが前を見ると暗い大きな塊が見えてきました。

 それは遠くに見える海に浮かぶ島のようでしたが、ここは雲の上ですので、

「雲の海に浮かぶ島なの?」

 アリスは思わず声に出して言いました。

 それに答えるように魔女が言いました。

「あそこが魔法の国よ」

 ホウキはどんどん島に近づき、島の上に到達すると島の中の建物を飛び越していきます。

 そして大きな塔がある建物に近づくと、大きな扉の前にゆっくりと降りていきました。

 ホウキが地面に近づくとアリスの足は久しぶりに地面に立ちました。

                       つづく





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