第17話プレゼント

「見た?虹出てたよ。」


「見た!私もそれ言おうと思ってた。きれいだったね。」


2人違う場所に居るのに同じ物を見て感動出来る事がこんなに嬉しいとは思わなかった。私達は虹だったり、ひこうき雲だったり、気球だったり、不思議な形の雲だったり一緒に居なくてもいつも同じ物を見ていた。小さな事だけど私達はそれが嬉しかった。夜は相変わらず長電話で毎日過ごしていた。

 仕事中、奏斗君が縫製指導のふりをしてわざと私の指に触れてくる。奏斗君の手が私は大好きだ。指が長くて大っきくてゴツゴツして無くてキレイな手をしている。私が手に見惚れていると奏斗君が、


「ルミさんそんなに俺の手が好きなの?」


「うん。上手に縫製する奏斗君の手、良いよね。後は私の頭ポンポンってしてくれる優しい手が好き。」


「今度頭ポンポンしてあげるね。」


小さな声で2人だけの秘密の話。マスクをしてなかったら絶対に他の人にバレちゃうくらい私達の顔はニヤけていたと思う。特に奏斗君は私にだけ優しい顔で話す。と他の人から言われた事があったらしいし…。会社ではあまり話をしないようにしないと。

 




「誕生日どうする?」


奏斗君の誕生日は金曜日だったので、


「仕事終わったら焼肉行って2人でお泊りしたい…。」


「ルミさん大丈夫なの?」


「うん。奏斗君の誕生日一緒に居たい。ダメかな?」


「俺は嬉しい。お泊りしたい。俺と一緒に居て欲しい。」


「一緒にいよう。」


「ルミさんは何か欲しい物とか無いの?」


「奏斗君と一緒に居れたら嬉しい。」


私達の誕生日は8日違いで奏斗君が最初に歳をとる。1歳だけ縮まる歳の差。


「奏斗君は何か欲しい物とかある?」


「んー別に無いかな?あーでも、んー…子供欲しい…。」


「え?赤ちゃん?って事?」


「…うん。」


「………奏斗君の子供はきっと可愛いよね。会いたいね。私が産んでもよいの?」


「他に誰が産むの?」


「よし、じゃあ奏斗君、頑張ってね。」




 48歳の私が妊娠出産出来るとはとても思えない。でも、2人で夢見てもよいよね。来るはずの無い未来…大好きな人との子供を夢見る。

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