第7話努力
『アオバモユル』
努力。それだけでは無いかもしれないが、この合格は彼の努力だ。
「大学行きたいんなら国公立じゃないと…」
爽の中学の最初の三者面談前にはなした。
それなりに勉強は出来たのかもしれないが、まさかこれほどまでとは…。中学も普通に地元の中学へ入り高校も進学校とは言われていたが普通の高校へ入学した。塾へは通わず自分で勉強をしてきた。夏はエアコンが無い我が家では耐えきれなくて図書館へ通った。それでも高校のテストで1番を取ることは難しかった。我が家では、爽の祖父が校内で1番だったら壱万円を渡してやる気を出させていた。
爽は校内テストよりも、模擬テストで校内1番を取ることが多かった。高校の進学校となると結構模擬テストがあり爽は着実に稼いでいた。
滑り止め無しで挑んだ入試。
「番号があったよ。」
15時。丁度休憩中。電話をもらった時涙が溢れて…。会社に居るのに泣いてしまった。
それを見た奏斗君がびっくりして、
「どうしたの?」
「合格した…。」
奏斗は何度も頷いてよかったね。って微笑んでくれた。
仕事が終わり家に帰り爽とハグをする。
「よかったね。頑張ったもんね。」
何度も家族で喜んだ。凪が側で見ていて
「俺はそんなに心配してなかった。爽があんなに勉強してるのに落ちるわけがない。そう思っていたよ。俺だけだね。合格するって思っていたの。」
凪が得意そうに話した。傍から見ても爽は頑張っていた。これから入学の手続き、アパート探し…忙しくなる。嬉しい忙しさだ。
智からもその日のうちに連絡があった。とても喜んでいた。智は2度目の離婚をしてそちらの子供に養育費を支払っていた。
「応援出来事あれば言って。爽の為に何かしたいから。」
こんな申し出があったが、後々面倒だと思い軽く流した。爽にもこの事を伝えたが、
「何で?今更怖いんだけど…。」
爽が1番父親から嫌われていた。本人も悲しいがそれを解っていて『俺、1番叩かれたよね。怒鳴られたし…』複雑な表情を浮かべた。自分の遺伝子が快挙を成し遂げた事が嬉しかったのかもしれない。でも、側で支えて育ててきたのは私だ。私達家族だ。智には関係の無いこと、そう思うことにした。
大学生協で1日で全て進学の準備が整った。後は引っ越すだけ…。爽は念願の一人暮らしをとても楽しみにしていた。
何もかも順調だった。私がこんなに幸せで良いのか?今の自分が幸せ過ぎて怖かった。
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