虐げられた、令嬢は…… 

❄️冬は つとめて

第1話 虐げられた、令嬢は……

「エリーナ!! その見窄らしい格好で、部屋から出るな!! 」

この屋敷の嫡男のエリオスが叫んだ。エリオス・ルピス伯爵子息、金髪碧眼の凛々しいエリオスは見窄らしいエリーナに大声で叱咤した。


「ああ…… お許しください、エリオスのお兄さま…… 」

と呼ぶな!! エリーナ!! 」

大きな声に震えながら、エリーナは床に這いつくばる。エリオスと違い、見窄らしい見た目のエリーナは銀色の髪を床に流した。


「とにかく部屋に戻れ!! その見窄らしい格好で、屋敷を徘徊するな!! 」

エリオスは真っ赤になって、怒鳴っている。


「申し訳、申し訳ございません…… 」

エリーナはますます、頭を床に垂れた。薄汚れた色のドレス、処々に繕った後がある。


「誰か、エリーナを部屋に戻せ。暫く部屋から出すな。」

「は、はい。」

エリオスの言葉に、近くにいた侍女達は嫌嫌ながらエリーナを掴み部屋へと促す。


「嫌です、義理のお兄さま!! あの部屋は嫌です!! 」

「義理の兄と呼ぶな、エリーナ!! 」

エリーナは悲痛な声をあげた。


「ああ…… お兄さま。」

エリーナは侍女達に掴まれ、項垂れながら廊下を歩く。


(ああ…… なんて冷たい目。)

侍女達の冷たい目が、エリーナの心を震わせる。



「エリーナ樣。エリオス様のご命令です。」

「暫く部屋から、御出になられませんように。」

侍女達は、扉を開けエリーナを部屋の中へと押し込めた。扉を閉め、鍵をかける。


「嫌、嫌ーー!! 出して、出して!! お願い、出してーー!! 」

部屋に閉じ込められたエリーナは、扉を叩いて出してくれるようにお願いをする。だが、誰一人それに応じてくれる者はいなかった。


「お願い、この部屋は…… この部屋は、いや…なの…… 」

エリーナは扉の前で崩れ落ちた。


「大丈夫、大丈夫よ。いつか、いつか、義理のお兄さまも分かってくれるわ。」

エリーナは自らを抱きしめて、いつかエリオスも分かってくれると心を慰めた。



カチャリと、鍵の開く音がして扉が開いた。


「エリーナお姉様、いい加減にして。」

「エリカ…… 」

そこには金のくるくる巻毛の可愛らしい令嬢が立っていた。


「声が、私の部屋まで届いたわ。」

呆れたようにエリーナを見る。


「ほんと、恥ずかしい。」

「も、申し訳ございません。。」

エリーナは震えながら、床に手を付いた。


「やめて!! 」

エリカは、エリーナに声を荒げた。


「エリカ。」

「スクワート様。」

エリカの後ろから、茶色の髪の好青年が声をかけてきた。


(スクワートさま…… )


「お姉様が、酷いの。」

「ああ…… 」

エリカの言葉にスクワートは頷いてエリーナを見る。


「エリーナ、いい加減にしないと婚約者解消を考えられるよ。」

冷たい声で、スクワートはエリーナに言った。


(ああ…… スクワートさま。)


スクワート冷たい目をエリーナに残し、エリカの腰に手を添えてその場を離れていった。


皆から向けられる冷たい目にエリーナはその部屋を出て、震えながら裏庭へと走った。


「一生懸命やっていれば、いつか皆にも分かってもらえるわ。」

それでも皆から向けられる冷たい目に、エリーナは心を震わせた。


とぼとぼとエリーナは部屋へと、戻る。通り過ぎる時会う、侍女や使用人達は関わるのが嫌なのか離れていく。


エリーナは地下にある見窄らしい部屋へと入っていた。

処々に積まれた、荷物ような箱。簡易的に作られた、お粗末なベッドへとエリーナは身を沈ませる。


(ああ…… )

エリーナは、心震わせ涙ぐんだ。



「エリーナ!! エリーナは、どこ!? 」

突然聞き慣れた声が、エリーナを探している。


「この声は、」 


バアン!! と、見窄らしい部屋の扉が開いた。


!! 」

「こんな所にいたのね!! 」

鬼の形相のルピス伯爵夫人が、銀色の髪を振り乱して立っていた。




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