恐怖の訪問者

トイレの中は薄暗く、足音が響く。

欄は自分の影が壁に映るのを見て、心の中で何かがざわつくのを感じた。

ふと、時計が4時を指した瞬間、冷たい空気が彼女を包み込んだ。


その時、足音が聞こえた。

「テケテケ…」という音が、まるで彼女を呼び寄せるように聞こえてきた。


恐怖で動けなくなった欄は、扉を開けようとしたが、手が震えてうまくいかない。

すると、背後から「ヨジババ…」という低い声が響いた。

彼女は思わず振り返ったが、そこには誰もいない。


欄の心は絶望感に包まれ、恐怖が彼女を支配していた。


その頃、雅人たちはトイレの前で心配していた。

「欄、遅いな…大丈夫かな?」

麻美が不安そうに言った。


「ちょっと見に行こうか。」和也が提案したが、雅人は首を振った。

「待っていた方がいい。彼女が戻ってくるまで。」


しかし、その時、突然、トイレの扉が開き、欄が飛び出してきた。

彼女の顔は青ざめ、目は恐怖に満ちていた。「……何かがいる…!」


「何言ってるんだ、落ち着いて!」雅人が言ったが、欄はすぐに走り出してしまった。

彼女は廊下を駆け抜け、別の階へと逃げていった。


「一人で行かせたらダメだ!」和也が叫んだ。

彼の声には焦りが滲んでいた。


「私が行く!」麻美が言った。


和也は一瞬考え込み、決意を固めた。

「じゃあ、俺も一緒に行く。みんなで探そう!」


雅人も頷き、三人は息を合わせて廊下を駆け出した。

薄暗い空間の中で、足音が響く。

心臓が高鳴り、互いに不安を抱えながら進んだ。


「欄!」雅人が叫びながら、教室のドアを開けた。

中は静まり返り、彼女の姿は見当たらなかった。


その瞬間、廊下の奥から「テケテケ…」という音が再び響いた。

雅人は思わず後ずさりした。

「やっぱり、何かいるのか…」


一方、欄は一人で教室の中に飛び込んだ。

ドアを閉め、息を整えようとしたが、心臓の鼓動が耳に響く。

ふと、窓の外に何か影が見えた。

それは、上半身だけで這い上がる女の姿だった。


「テケテケ…」その声が近づいてくる。

欄は恐怖で声を上げることもできず、ただ震えていた。


暗闇の中、教室の隅に座り込んでいると、ふと気配を感じた。

隣の教室から出てきたのは、年老いた女性の姿。

彼女は目を細め、じっと欄を見つめている。「どこに行くの?」

その声は低く、どこか不気味だった。


「や、やめて…」欄は言葉を絞り出した。

恐怖で体が動かず、ただその場に立ち尽くしていた。


その時、雅人たちが教室のドアを開けて入ってきた。

「欄!」麻美が叫ぶ。「大丈夫?」


「逃げて!」欄は叫んだ。

「テケテケとヨジババが来る!」


和也は状況を理解し、すぐに彼女を抱きしめた。

「大丈夫、俺たちがいるから。」


その瞬間、教室の中で冷たい風が吹き荒れ、窓がバタンと開いた。

影が教室に入り込んでくる。

雅人は反射的に後退した。

「どうする、逃げなきゃ!」


四人は手を取り合い、廊下へと駆け出した。背後からは「テケテケ…」と「ヨジババ…」の声が響き渡る。


彼らは必死に逃げ、階段を駆け下りた。

息を切らしながら、外へと飛び出すと、冷たい夜風が彼らを迎えた。

振り返ると、校舎の中は静まり返り、もはや何も見えなかった。


「もう二度とこんなことはしない!」麻美が叫び、和也は頷いた。

「あれは本当に怖かった…」


欄はまだ震えていたが、友達と一緒にいることで少し安心した。

「私、もう怖い話は聞かない!」


その夜、彼らは学校の怪談が持つ恐怖の真実を知り、決して忘れることのない体験を共有した。

テケテケとヨジババの影は、彼らの心に深く刻まれ、今後の冒険を思いとどまらせることとなった。

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恐怖の友 reo @reo06

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