第2話

 森を抜けると、そこには中世ヨーロッパみたいな街並みが広がっていた。

 石畳の道、レンガ造りの家、行き交う人々もなんだかファンタジーっぽい服装だ。


「うわー、すごい……本当に異世界なんだ」


 キョロキョロしていると、「冒険者ギルド」と書かれた大きな木の看板を発見。


 これ、知ってる!

 ゲームとか小説でよく見るやつ!

 情報収集はここで決まりでしょ!


 意気揚々とギルドの扉を開けると、中は酒場みたいに賑わっていた。

 屈強そうな男の人や、綺麗な女の人が武器や防具を身につけて談笑している。

 

 ……場違い感ハンパないんだけど。


 あたしが入ると、一瞬、ギルドの中がシン……となる。

 みんなの視線があたしに集中する。


 うぅ、気まずい……。


「あ、あの……」


 緊張して声が上ずるあたしに、カウンターの可愛いお姉さんが天使みたいな笑顔で声をかけてくれた。


「いらっしゃいませ。初めての方ですか?」


 助かったー!


 ミリアさんと名乗る受付嬢に、あたしは事情を説明しようとする。

 でも、異世界転生とか、スキルとか、うまく言葉が出てこない。


(どうしよう……)


 その時、また目の前にステータスウィンドウがポップアップして、「貢がせスキル」の文字がピコン!と光った。


「え、今使うの? いや、まあ、助かるけど!」


 半ばヤケクソでスキル発動!


 すると、ミリアさんの目の色が明らかに変わった。

 さっきまでのビジネススマイルじゃない、なんかこう……熱烈な感じ?


「あら、あなた……もしかして、噂の『異世界からの迷い人』様では!?」

「へ?」

「お待ちしておりました! ギルドマスター、オルドー様!」


 ミリアさんがカウンターの奥に向かって叫ぶと、クマみたいに大きな髭面のオジサンが出てきた。

 ギルドマスターのオルドーさんらしい。

 彼はあたしを見るなり、目をカッと見開いて叫んだ。


「おおっ! この清らかな魔力! まさしく、神々の使いに違いない!」


 ……いや、あたし魔力とか持ってないんですけど。

 ていうか、神の使いって何!?


 オルドーさんの声に、周りの冒険者たちもワラワラと集まってくる。


「本当に異世界から?」

「どんな世界から来たんだ?」


 質問攻めにあってあたしはタジタジ。

 でも、なぜかみんなめちゃくちゃ好意的。

 しかも、次から次へとプレゼント攻撃が始まった!


「これは俺が昔使ってた短剣だ。お守り代わりに持っててくれ!」

「この革のベスト、サイズが合うならどうぞ! 防御力はそこそこありますよ!」

「回復薬は必需品だ。これも持っていきなさい!」


 え、え、え?

 いいの?

 これ全部タダ?


 貢がせスキル、効果ヤバすぎ!


「あ、ありがとうございます……!」


 お礼を言うと、みんな嬉しそうに「いえいえ!」って。

 気づけば、あたしは初心者とは思えない立派な装備一式をゲットしていた。

 

 オルドーさんはすぐにF級冒険者の証書を作ってくれて、最初の任務まで紹介してくれた。


「近くの森での薬草採集だ。報酬は少ないが、危険も少ない。まずはここから始めるといい」


 至れり尽くせりだ……。

 ギルドを出たあたしは、新しい装備を眺めてニヤニヤが止まらない。


「これって、本当にあたしのスキルのおかげ?」


 ちょっと罪悪感もあるけど……まあ、いっか!

 せっかく手に入れたチャンスだもん。

 ありがたく使わせてもらおう!


 目指すはSランク冒険者!


 貢がせまくって成り上がってやる!


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