日めくりラブレター
とう子
第1話
今日は幽霊の日なんだって。幽霊っていると思う?
いないと思うな。なれるものならみんな、君に会いたくてこの世に残るよ。
君は小さな写真立てに、僕は君の可愛い横顔に言った。
明日はすいかの日だって。買ってくるね。写真に向かって君は続ける。ほらね、いないだろ幽霊なんて。僕はもう君と話せない。
今日はすいかの日だよと君が持ってきた皿を、僕は感慨深く見つめてしまった。何年も前に教えた、全部同じ甘さになる切り方を、飽きっぽい君がまだ覚えているなんて。
僕はいいから君が全部食べなよ。すいかだってお供えになるより君に食べて欲しいだろうよ。
結婚祝いにもらった皿なんか、もう使うなよ。
今日は菜っ葉の日だよ、なんてにこにこ言うくせに、今夜君は何の皿も持ってこなかった。さてはまたカップ麺で済ませたね。ちょっと痩せただろ。髪も切ってない。
化粧はあまり好きじゃなかったのに、あれからずいぶん上手くなったよね。食べてないのに肌だけ変に綺麗だ。
ごめんね、泣かせて。隠させて。
それで、今日は何の日なのさ。君はもう言わない。正真正銘の三日坊主。昔からそうだった。
僕に話す前に洗濯物取り込んでおいでよ、今晩から天気崩れるから。取り込んだ後は戸締まりもしっかりね。あとさ、非常時用のリュック、また中身整理しとこう。
飽きっぽくて可愛い君は、今日も僕の事が大好きだ。
日めくりラブレター とう子 @nasturrhythm
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