第10話[飾られた称号]
私は生まれてすぐに戦場に立たされた。前線へと出たのはわずか齢6歳。言葉もおぼつかない一人の子どもだった。
周りと違う点は2つ。神の子、そして想像力が豊かなこと。私は戦場で人間では届かない権能を発揮して大勢殺した。初戦で50人、次戦で140人、地上にいた頃すべてを合わせれば500人に上った。そんな私は「怪物」と、村人も仲間も敵も親も、誰もがそう呼んだ。
戦に慣れた10歳の頃、力を恐れた両親は生贄として私を上に差し出した。
「あぁ御上様よ、この穢れた怪物をどうか!」
「......」
哀れな姿を見かねてか、はるか遠くからアレス神が出向き、ヴァルハラへと引き取られた。
「彼女は戦場でずっと戦っていたにも関わらず、全ての者に捨てられた可哀想な少女でございます。ゼウス様...!ぜひ、御慈悲を!」
アレスは私に気を使ってくれた。でも、響かなかった。そして、それはゼウスも同じだ。
「わしに関係あるかね。その「怪物」。」
あぁ、ここでもそれを言われるのか。私は心底この世界に飽き飽きした。
アレスはゼウスの言うことは正しいと分かっている。私は最低限の衣食住を渡されて見捨てられた。
「すまない」
その言葉も響いてこない。
出会いは突然だった。路地でボーとしていると、背の高いガタイのいい男が話しかけてきた。最初は影で顔さえ見えなかった。
「なぁお前、俺のとこに来ないか?」
彼の言葉は正直そうだった。哀れみでもない、心からの誘い。
「ギリシャはお前を捨てたんだろ?お前が欲しい」
行く当てもない私は乗ることにした。
城に着くと拍子抜けした。ヴァルハラ城より小さいのは予想していたが、私の攻めた国の城よりも小さい。私の気分は最悪だった。
彼は私を部屋に案内して、やっとまた口を開いた。
「俺の名はアスタロテ。お前の名は......あ〜....ティシュトリヤだったかな。これからお前は...」
私は困惑した
「今...」
「ん?どうした?」
「今、なんて...!」
なぜ怪物と呼ばないのか
「アスタロテ。お前の名は、ティシュトリヤ」
「あぁ...!」
やっと
「うわっ!泣くな泣くな!ただでさえボロいのにシミがついちまう」
やっと、報われた気がした。
「お前はこれからここの兵士となってもらう。ただし、しがない一般幹部としてだ。俺は、お前の力を買う。ティシュトリヤ、俺について来い」
私はいつも一人だった。仲間がいても拒絶された。たとえ彼の言葉が偶然だとしても、ただ事実を述べただけだとしても、この瞬間、この空っぽの命を捧げるのに充分な理由が私に湧いた。。
はは...今こんな事思い出しても仕方ないけどな......
いや、空っぽから満たされたこの命を燃やしきらないで何になる。今、私は私と仲間のために全てを捧げる!
「想像を広げろ!私は星の神!ティシュトリヤだ」
そう唱えた瞬間、ヒカリの飛んでいった巨星の後ろに、違う影が現れた。初めに降らせた巨星よりも2倍ほど大きな星が加速しながら落ちてくる。ヒカリが巨星に全身全霊を振り絞って破壊しようと剣を突いた瞬間、巨星に小惑星が衝突した。
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