第9話[100%の向こう側へ]
視界を覆い尽くすほどの巨星がヒカリの下へ降って来る。彼女の名はティシュトリヤ。雨と星の神である。
「この星はあと5分程でここに到着する。私は神ゆえに頑丈。しかし貴様らでは為す術無く塵になるだろう。まぁ、せいぜい頑張るがいい。だがその間、足止めはする。」
ヒカリは考える。今の自分に何ができるか。何度も何度も動こうとするが、殺される未来しか見えてこない。しかし、一刻も早くこの場から出なければならない。そんなことをずっと考える暇もなく、ティシュトリヤの流星群を対処しなければ無い。
ヒカリは覚悟を決めて動き出した。
フェイントを挟んで逃げ出す...
と、思わせて弧を描きながらティシュトリヤに近づく。
「バカなのか?」
そんな言葉は気にしない。一心不乱に剣を打ちつける。何度防ごれても当たるまでやり続ける。
ヒカリの目に光ったものが見えた。何も考えずにそこへ剣を差し込む。
その時、肩に激痛が走った。ヒカリは咄嗟に後ろに下がる。流星群の一部が直撃して、肩がえぐれていたのだ。
「ヴアァッ!ハァ...ハァ...」
立っていられないほどの激痛。ヒカリは顔面蒼白になって息を荒げる。
「だから言ったものを」
しかしティシュトリヤは無情にとどめの攻撃に入る。終わることのない岩石の雨。ヒカリの意識は朦朧としていた。
ヒカリは倒れ込む瞬間、違和感を覚えた。視界が何故か明るい。倒れ込む影響ではない浮遊感も感じる。そしてさらに、ヒカリの周りが光明に包まれる。突然ヒカリは目を見開き、血を鼻と口から出しながらも足を前に出す。そして、トップスピードで走り出し、ティシュトリヤの懐に入り込む。その流れに乗り、脚から肩までを斬った。
彼は満身創痍になりながらティシュトリヤを見つめる。
ヴァルハラでは神が多く点在している。彼らはいつも自分にできて当たり前のことを想像して権能を使用する。つまり、根本的に見れば彼らは自由な能力を自分で制御していることになる。しかしその制御を無意識的に解除し、能動的に使うことを「覚醒」と言う。
ヒカリは極度の極限状態に陥り、本能的に、魂を燃やして、限界の300%以上を解放した。
ティシュトリヤは何が起きたか理解できず、ただただ驚いていた。
「貴様、今何をした?」
ヒカリは剣を前に突き出して応える。
「こっちに来たからには、こっちの法則(ルール)でやらせてもらう。」
ヒカリはまた高速で近づき、ティシュトリヤの体に斬撃を加える。ティシュトリヤは反撃などしてる暇もなく、押されていく。ティシュトリヤは腕から鈍い音が鳴ったことに気づく。
「しまった...篭手が!」
ヒカリは隙を逃さずに、彼女の腹に剣先を突き刺す。
「OK...!」
「グフッ!」
ティシュトリヤか無力化したのを確認してからすぐに、ヒカリは巨星の方向へ走り出す。そして燃えているような羽を生やして、光を放ちながら飛んでいく。
そんな最中にティシュトリヤは一人、走馬灯を覗いていた。
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