コノクニ
馨
序・世界観、登場人物
この物語は短編・中編・長編と物語によって変動します。
ですが、同じ世界観で物語が進行しますので、もし世界観や登場人物に迷ったときはこちらをご参照ください。(物語の進行により登場人物や状況などの追加設定が行われます)
ーーー
【序】
ラジオから朗読が聞こえる。
朗読はどうやら自国の昔話をベースにわかりやすく展開されているようだった。
ーー昔々、我々の祖であるブッダ様は貧困に苦しむ人々を見つけました。ブッダ様が話を聞くと、人々は苦しい国からにげてきたようでした。それを哀れんだブッダ様は人々にこう言いました。
「この種をこの土地に植えなさい。」
ブッダ様から人々はタネを受け取り、それを土地に植え始めました。次第にタネは大きな稲穂となり、のちの米となったのです。米は栄養もあり長持ちする植物です。人々は飢えから解放され、次第にこの土地に住み始め、備蓄が増えていきました。
ブッダはさらに言いました。
「この土地は妖怪も住んでおり、きっと人間と仲良く暮らせることでしょう」
そう言い、ブッダは妖怪と人々の交流を勧めました。妖怪はなんでも知っていました。米の作り方から釣りの方法、木の伐採方法から衣服の作り方まで。人々はそれをありがたく受け継ぎ、妖怪は人々に言語での交流やコミュニケーションを学びました。次第に二種族間の交流は盛んとなり、深い絆が結ばれたのです。
人々や妖怪は言いました。
「ブッダ様、我々の飢餓をお救いくださりありがとうございます。お礼にですが、私たちが作った米、そしてその"作る""狩る"という教えていただいた知識を使い、様々な食料や調度品をお渡しいたします。」
ブッダは言いました。
「私は当然の行いをしたまでのこと。ここまで繁栄できたのはあなた方のお力のおかげです。」
人々や妖怪は言いました。
「私たちをお救いくださったブッダ様とこの土地をこれからも守り、繁栄することをお約束します。」
ブッダは言いました。
「それは素晴らしいこと。では、この土地に名前を授けましょう。」
ブッダは一呼吸を置き、こう発しました。
「この土地は今日からコノクニ。コノクニに幸のあらんことを」
ラジオはここで短い音楽とともにコマーシャルが流れ始めた。
「コノクニに幸あらんことを、か。」
それを聞いていた長身痩躯の男はその体には見合わない重くだるそうな足取りで進んでいた。視線は虚ろで、どこに焦点が合っているのか認識できない。のろのろと歩いた先は山積みになった荷物のてっぺんだった。長身痩躯の男はそこに腰掛け、あたりを見回す。どうやら廃墟のようで男以外誰もいなかった。
上空にはドローンだろうか。遠くで警報もなっていることから誰かを追いかけているのだろう。
机や引き出しが散乱としており、長年使われていないことがわかる。左手に持っていたビールの瓶を軽く振った。ピチャピチャと水音が聞こえ、まだ入っていることがわかる。それを一瞥すると、これまた気だるそうに口につけた。乾いた喉を潤せたのにも関わらず、男の顔は虚ろなままだ。
「幸せなど、どこにも、ない。」
長身痩躯の男は小さく呟いた。
「幸せなど、今のコノクニにはない。だから、俺が幸せにしてやるんだ」
口を右手で拭った。口の周りが赤く染まる。
「幸せなコノクニに、乾杯だ。」
ビール瓶を持っていた左手を上に掲げる。長身痩躯の男が座っていたのは、赤く染まった肉塊の上だった。
ーーコノクニに幸あれ
それは、コノクニ民に根付いた理のようなものだった。
ーーー
【登場人物】
・ (妖怪・不知火)
…主人公。名前がない。コノクニ軍中央司令部・軍部所属。Ghost Unit(ゴーストユニット)通称G.Uの第0番隊隊長。大佐。
・スハイツ(人間)
…コノクニ軍中央司令部・軍部所属。G.U第0番隊副隊長。少佐。
・ユニコ(妖怪・かまいたち)
…コノクニ軍中央司令部・軍部所属。G.U第0番隊隊員。
・イト(妖怪・半人半妖怪、蜃気楼)
…コノクニ軍中央司令部・軍部所属。G.U第0番隊隊員。
・ポンズ(妖怪・豆腐小僧)
…コノクニ軍中央司令部・軍部所属。G.U第0番隊隊員。非戦闘員(医療担当)。
・ホシノ(妖怪・不知火)
…主人公の弟。コノクニ軍中央司令部・軍部所属。情報図書部署の司書。
※以後、物語の進行具合で追加アリ。
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