第5話 仲睦まじく

 ミノタウロスは駆け出し探索者の鬼門とされている。強靭な肉体を突破する攻撃力か、巨大な戦斧による大技を防ぐ防御力が足りず倒される場合が多いためである。

 しかし、弱点を把握しある程度の人数で役割分担をしっかりして挑めば、かなり簡単に倒す事が出来る。

 ミノタウロスは魔法抵抗力がボスモンスターに比べて弱い傾向にある。そのため魔法職が後衛で魔法を準備しておき、前衛が時間を稼ぐ戦法を繰り返せば驚くほど楽に倒せるのだ。

 そのため探索者たちはミノタウロス戦によって、情報収集の大切さと役割分担の大切さを学ぶとさえ言われている。


 しかしだからと言ってその上位種である『双頭牛鬼』を同じ要領で討伐しようとすれば痛い目を見ることになる。

 見た目などから上位種と呼ばれているが、ミノタウロスと『双頭牛鬼』は全く異なった攻略法が必要である。

 ミノタウロスならばある程度経験を積んだ探索者ならばソロでの討伐が可能であるが、『双頭牛鬼』ともなれば流石にパーティーないしレイドで挑まなくてはならない強敵であるのだ。


「『双頭牛鬼』はミノタウロスでは弱点であった魔法抵抗力は強みと言えるほど強化されているし、ミノタウロスの時は使ってこない魔法も使ってくるんだ。しかも…」

「ですがそのお陰で筋張った肉がばかりなミノタウロスよりも、柔らかくジューシーなお肉なのが特徴ですね」

「なるほど。肉牛なのね!」

「五十鈴さん!?」


 『双頭牛鬼』の厄介さについて話している最中であったのに、青葉が優梨花が興味を持ちそうな情報をねじ込んできた。

 それにより秀樹は、青葉が協会職員としてではなく、優梨花の後輩として情報提供している事に気がつく。

 どうりで普段は受付ではなく中で仕事している事を知っている筈の優梨花が、協会支部に入った瞬間、青葉を探す素振りをした筈である。青葉から事前に連絡を貰っていたのである。美味しい食材となるモンスターの出現を。

 

 しかしそれ気付いた時にはもう遅い。既に優梨花は『双頭牛鬼』の肉で何の料理を作ろうか考え始めてしまっている。

 こうなってしまえば秀樹が何を言っても難しいだろう。

 

「…五十鈴さん」

「すみません秀樹さん。ですが『双頭牛鬼』の肉が美味しいというのは確かな情報ですよ」

「はぁ…それはまあいいけどね」

「私の方で『ミノタウロスの洞窟』の調査依頼という形で処理しておきます。調査をしている最中に遭遇してしまい討伐という形となる分には問題ありませんので」

「ありがとう青葉ちゃん」

「いえ、優梨花さん。また美味しそうな食材の情報が入ったら連絡しますので」


 これから美味しいそうなモンスターが現れる度に秀樹も駆り出される事になりそうだと思いつつ 仲睦まじい2人の様子を見ている秀樹なのであった。







 

 

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