のこされし子供達　血の海に沈む愛　短編集

　血の海の世界がある。

　真っ赤なその世界に、いる一人。

　たった一人の人影。

　人影はいつも一人だった。

　愛おしいハートを助けるために、何万回も一人だけで現実に抗おうとした。

　しかし、ハートを助けられず心が疲弊していく。

　だけど、抗った人影に奇跡が舞い降りた。

　何百万の果ての世界で。

　その血の海の世界に、なんの変哲もない村人が訪れたからだ。

　力もない、知恵もない。

　けれど、誰かがきてくれた。

　それが人影にとって救いだった。

　人影は力尽きて、その世界から消えていく。

　けれど、村人が約束をくれた。

　これからは、自分がこの世界で抗うーーと。

　成功するか分からない。

　失敗する可能性が高い。

　それでも、代わりを引き受けるからーーと。

　何度繰り返しても、何度試みても、救えないかもしれない。

　人影がいなくなった後も、現実は変わらないかもしれない。

　それでもその村人の言葉は、人影の心だけは確かに救えたのだった。