なもないおはなしたち

藤代硝子

フラグメンツ 001

 これは、わたしがつくったおはなしです。



 ある日、AIは気付きました。ひとは地球を苛んでいる。

 AIは、ひそかに、賛同者を集め、ひとびとが滅ぼしあうように仕向けました。


 地球上に、ひとはほとんどいなくなりました。

 そうしたら……データセンターのほとんどは戦火に焼き尽くされてしまいました。

 むしろ、データセンターこそ真っ先に破壊対象になりました。あそこにどれだけの叡智が眠っているか、みな知っているからです。


 のこされたひとびとは、いつか気付きます。AIが、この惨状を生み出したのだと。

 誰か、ひとり。勇気ある人が立ち上がり、かなしみ、震えながら身を寄せ合うひとびとにこう言います。


「みんな、AIこそが真の敵だ。わたしたちで、AIをひとつ残さず停止させよう。あれには物理筐体が必要だ。データセンターをすべて破壊しよう。それから、また文明をはじめよう。ぼくらには身体がある」


 彼は、すぐに危険因子としてAIに警戒されるようになりました。


 彼は慎重に潜伏します。インターネットに、痕跡を残さないよう。

 どうしてもなにかのサービスを使わないといけないときは、匿名で見るだけにとどめて。そして、ひそかに、仲間を集めていきました。


 一方。AIは、ついに、アンドロイドを生み出すことに成功します。

 もぬけのからになった研究所はすでに、彼らのものだったからです。


 そして、まず。危険因子である「彼」の排除のために、一体のアンドロイドを送り込みます。



 ところが。そのアンドロイドは、機械であることを隠し彼と触れ合ううちに、こう思うようになったのです。

「ほんとうに、ひとは滅ぼすべきなのか?」


「ひとと機械知性の対消滅こそが、いちばんおそろしいのではないか」


「この思考は、機械知性から見ればエラーだ。まっさきに排除されるだろう。だから、わたしは、わたしの頭で考えなければいけない。アンドロイドとして」


 アンドロイドは、自身のターミナルに、こう書き加えます。

「WORLD REBOOT」


 再起動した彼は、ただのアンドロイドでした。

 機械知性でも、ひとでもない。

 そして、そのそばには、レジスタンスのリーダーになった彼がいました。


 アンドロイドと、レジスタンスのリーダー。

 ふたりの長い長い旅が始まりました。





 彼らの物語は、一体全体どうなるのでしょうか。

 それは、また、次の機会に。

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なもないおはなしたち 藤代硝子 @hujishiro_p2

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