俺のチートを探す旅【完結】
タウフ
第一章 新たなる旅
#1 森スタート
#1 森スタート
学校の成績は普通よりちょっと下くらい、
勉強よりアニメや漫画やゲームをして過ごす時間が多い。
男友達は何人かは居る、彼女は…聞かなくてもわかるだろう?
俺は平凡な高校生活を送っている、どこにでも居る男子高校生だ。
たぶん日本に沢山居る普通の男子高校生の中の一人。
夜な夜な好きな作品の中に自分が登場したらとか、
その世界に入り込んでしまったらとかって妄想をしながら眠りにつくのも普通だよね?
そんな普通の俺に普通じゃない事が起きた。
物語的には凄い普通だけど、実際に起きたんだから仕方ない。
眠りから覚めると俺は異世界らしき場所に居たのだ。
何故か学校の制服姿で。
俺の人生はこういう面白イベントとは無縁だと思ってたけど、
憧れの異世界ライフが始まってしまったらしい。
「ここが異世界でござるか~」
異世界に来たと悟った俺は、
なんか主人公らしい事を言おうとしたが変な語尾になっただけだった。
周囲には見知らぬ森が広がっている。
まず見知った森がないんだけどね。
森スタートで記憶がないとすると、神様の想定外で俺が死んでしまって、
お詫びと共に異世界に転生したパターンかな?
でもその場合、その辺の件がなかったのは妙だな。
RPGの世界に入ってしまったパターンの場合、
森スタートじゃなくてなんか物語の導入的なやつから始まるはずだ。
キャラクリとかもなかったし。
むしろ俺のままだしこれ。
フルダイブ型VR装置を強制装着とか…だったら覚えてないのも変か。
異世界に召喚されたパターンの場合は森スタートじゃなくて、
召喚の儀式に使う装置とか魔法陣的なやつがある場所に転移して、
召喚した人達の前に現れるはずだから違う。
普通に寝て起きたらこれだったような気がするから夢の世界のパターン?
何れにしても俺には異世界物とゲームの知識が豊富にある。
つまり無双できるってことで、転生か召喚か夢かVRかなんてことは重要じゃない。
大事なのはチート能力が備わっているってことだ!
「ファイヤーボール!!!!」
いや…これじゃなかったか。
基本は炎の魔法で名前はファイヤーボールなんだけどな。
フレイムシュートか?それともナントカ魔法とかって仰々しいのを付ける必要があるのかも。
「サンダーボルト!!!!」
さて…レベル上げが必要なRPGの世界で最初は弱かったとしても問題ない。
効率的なレベル上げに必要な倒しやすいけど経験値の多い敵を見つけるのも得意だから!
とにかく情報収集をしよう。
少し歩くと大きな街か集落があるはずだ。
最初の町ってやつ。
人通りが無さそうな森なのに何故かある道も基本通りあったから先へ進んでみると、
美少女とかの主要な登場人物に出会うイベントもなく集落へ辿り着いてしまった。
そういうパターンもあるでしょう。
立札には日本語でルルル村と書いてある。
これは異世界の言語を日本語として認識できる能力のお陰だろう。
手始めに判明するありがちな能力だけど、これはこれで重要だ。
都合が良すぎる気もするけど、なくちゃ困るもんねこれは。
一人で納得しながら村に入った俺は、
お馴染みの中世ヨーロッパ風らしい村を見て、
いつも通りだとテンションを上げながら何かしらのイベントを起こすべく探索を始めた。
中世ヨーロッパの田舎町って本当にこんな感じだったのかな。
俺をこの世界に転生させた相手とのイベントとか、
チート能力が明らかになるイベントとか、
異世界を旅してまわる相棒的なキャラとの出会いとか、
他のパターンは何があったっけ?
パーティに入ってないから追放されないし。
一緒に召喚された仲間は居ないから、
仲間が死ぬとか裏切られるとかもない。
ここはやっぱり、困っている美少女を助けるとか、
勇者様とか言って話しかけられるとかのイベントが良いんだけど!
防御性能度外視の露出が多い防具を装備してるのね!
しかし、そんな妄想を膨らませていてもイベントは起きなかった。
「仕方ないからスライムでも倒すか」
と思ったけど初期装備が素手のパターンだった。
「あのネバネバしてそうなのと素手で戦うのはやだなぁ」
村の外でイベントが起きるとか一定レベルまで上がるとイベントが起きる系かと、
疑い始めた矢先、誰かに話しかけられた。
「おお!お主は!異世界から来たのだな!」
知らない人に突然話しかけられる、
これもまたよくあるパターンだけど話しかけて来たのは、
犬を擬人化したような、いわゆる獣人だった。
彼は白と黒の毛色をしていてマッチョな体型と声から察するに男性、
リアルな感じの獣人。
ちょっと怖い。
このパターンで話しかけてくるのは物語のキーを握るだけでなく、
もっとこう、カッコいいとか可愛いとか、そういうのが多いと思うんだけど!
まぁモブ服を着ているので重要キャラじゃないんだろう。
「え、あー、そうなんですよ!」
「気が付いたら森に居て…ははは…なんか事情知ってたりします?」
「ていうか、なんで異世界から来たって知ってるんです?」
「簡単な事である」
「お主のステータスに異世界人と書いてあるからだ!」
ステータスってあれだよな、
目の前にタッチ操作可能なウィンドウ的なものが開いて能力値とか見られるやつ。
基本だよな!
「ステータスオープン!」
「何をしているのだ?」
「いや、俺もステータス見られるかと思って」
「ふむ、そんな事を言わずとも念じれば見られるのである」
「そっちのパターンでしたか」
「では改めて」
きっとゲームとかで馴染みのある見た目の画面が開くのだろう。
そのあたりを意識して念じてみたものの何も起きない。
「出てこないんですけど?」
「ふむ…どれどれ…」
獣人の人は俺のステータスが表示されているっぽい空間を見つめている。
「こ、これは…!」
「これは…!?」
きたよこれ、ついにきた!
なんか凄い能力値とか、凄いスキルとかだよこれ!
「魔力が0だからステータスを開けぬようだ」
「ほほう、なるほど、そういうパターンね」
異世界慣れしている俺は魔力が0とか言われても焦りはしなかった。
異常に低い能力値は後々なんか凄いことになるフラグだからな!
もしくは他の能力値が凄いとか、そういうやつだろう。
「そっ、それは困りました」
「俺はこれからどうしたら良いですかね?」
「うむ…確かにこの能力値では困ってしまうのも無理はない」
「ここで出会ったのも神の思し召し」
「お主がこの世界で生きていけるようになるまで同行しようではないか!」
「ありがとうございます!」(パーティメンバーが増えた!)
「俺は
「おお!ネオ殿というのか!良い名だ!」
「ソレガシの名は、ルルル村の戦士、ガンガガル=ガルッダである!」
(濁点が多いー!)
「皆にはガガガと呼ばれている!」
「ガルさんよろしくお願いします!」←ガガガさんは言い難かった
「おお!ガルさんも良い呼び名であるな!」
「よろしくなネオ殿!」
こうして多少不服ながらも、
異世界の相棒として獣人のガルさんと出会った俺は、
大きな街に行くとか、この世界の事を教えてもらうとか、
定番のイベントを何かお願いする事にした。
とにかく早めに俺のチート能力が判明するイベントを起こさないと。
「ヒール!!」
「どうされたネオ殿?」
「いや、ははは…」
回復でもないかー。
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