第2話 猛暑
楽しみだ、あまりにも楽しみだ。
まだ火曜日だって言うのに、いつまでも私の心は弾み躍っている。
いつも通り制服を着て家を出る。
猛暑、あまりに猛暑。
蝉の大合唱、太陽が熱という熱を暴れるように放つ。
地球温暖化だとかなんだとか言うが、本当に異常気象にも程がある。
わたしは日傘をさして歩き出す。
ちりりん、と自転車のベルの音。
通り過ぎていく自転車の風が少し涼しく、でもすぐにまた蒸し暑い空気が戻る。
コンパクトな手持ち扇風機をカバンから取り出し、スイッチをオンにする。
その風に顔を当てながら歩く。
門を通ると先生達に挨拶する。
教室にて、心人君は笑顔を見せた。
「おはよう」
「うん、おはよう」
席に着き、朝のチャイム。
教壇に立った先生は注意事項を話す。
「今日は今年一番の猛暑。熱中症に気をつけ、しっかりと水分をとってください。これでは始めましょう」
先生がぱん、と両手を合わせた。
日直が前に出て日付と天気、今日の時間割を語る。
夏休みが少しずつ近づいているのもあって、今日は五時間授業である。
いつもより早く帰れるとみんなが嬉しがる姿。
それでもわたしは、心人君と一緒に居たいばかりに少し帰るのが名残惜しいく感じる。
そんなこんなで授業は進む。
休み時間になった途端人はざわめきだし、数人の女の子がわたしの近くに寄ってくる。
「ねぇ桜ちゃん」
桜、というのはわたしの名前である。
「何?」
応じると一人の女の子は屈んで、わたしの耳元で囁いた。
「もしかして……心人君の事好き?」
かあっ、と胸が熱くなる。
なんでバレたのだろう。
どっから情報が?
動揺と恥ずかしさでわたしは混乱する。
「そそそそそそ、そんなことないよ! ちちちち、違う違う」
首がもげるほど頭を横に振るわたし。
それを見てにやにやする年頃の乙女たちであった。
「その反応、やっぱり好きなんだ!」
キャーキャーと高らかな歓喜の声を上げる乙女たち。
恋話に花を咲かせ始め、勝手に盛り上がっていく。
それでもわたしは隠そうとするがバレバレのようで、どんなに耐えようとしても無駄だった。
クラス中に広まるのは時間の問題なんだろう。
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