男嫌いのツンツン美少女女子高生が俺の嫁になるまで
湯島二雨
第1章…管理人
第1話 失恋した男
結婚式が始まった。
新婦は、俺が好きな女の子。
同じ高校だった、同じ部活だった、一つ上の先輩。サッカー部のマネージャーをやっていた女の子。
ものすごく美人でスタイルもめっちゃ良くて、とても明るくてとても優しくて笑顔がステキな、みんなのマドンナ的な存在。
それが俺の好きな女の子、
その由美先輩が、今日結婚する。
お相手は、もちろん俺―――
―――なわけがない。
新郎が俺だったら、どれだけよかったことか。
何度も夢に見た。由美先輩と結婚する夢。
だが夢は夢だ。叶わぬ夢だ。
俺の好きな女の子は、俺以外の男と結婚する。
そして俺はその結婚式に出席している。
とんでもない苦行だが、出席しないわけにもいかない。
結婚相手の新郎は、高校時代とてもお世話になった方なのだから。尊敬している方なのだから。
新郎はサッカー部の先輩でサッカー部の大エースだった、
現在はなんとプロサッカー選手だ。プロチームのレギュラーだ。
180センチ以上のイケメン、そしてプロで活躍するほどの実力。俺なんかとは次元が違うスーパーエリート。
プロのサッカー選手と結婚できて、由美先輩はさぞかし幸せであろう。
美男美女カップル、誰がどう見てもお似合いのカップル。
それに比べて俺はずっと補欠で試合で活躍どころか出場経験すらほとんどない。凡人な俺では逆立ちしても太刀打ちできない。敵いっこない。
由美先輩が二階堂先輩と結婚すること、俺は納得しているし心から祝福しているよ。
二階堂先輩がクズだったら俺がなんとしても略奪してやろうって思うけど、そうじゃないからな。
二階堂先輩すごく優しくていい人だし俺みたいなのにも良くしてくれたし、本当に尊敬している。
イケメンで高身長でサッカーも上手くて性格も良いとかスキがなさすぎる、無敵じゃん。
由美先輩を幸せにできるのは二階堂先輩だけだって確信しているよ。
これでよかったんだ、これで……
文句のつけようがないハッピーエンドだ。
「では、誓いのキスを」
神父さんがそう言って、結ばれる2人はそっとキスを交わした。
俺は拍手して祝福した。ああ、心から祝福してる。してるのに……
俺の心は張り裂けそうな痛みを覚えた。
―――
その日の夜、帰宅した。
自分の部屋で頭を抱えてうずくまった。
脳破壊された。祝福したけど、やっぱり辛い。
好きだった女の子が他の男とキスしている光景が何度も頭をグルグルしていて、涙が止まらなくなる。
「うぅっ……っ……!」
泣いた。とにかく泣いた。男がこんなに泣くのはみっともない。でも泣かずにはいられない。
なんで今さらこんなに辛いんだ……由美先輩と二階堂先輩は高校時代から付き合っててずっとラブラブで、俺もそれがわかってたはずだろ……
叶わぬ恋だってずっと前からわかってたはずなのに……
この日俺は、完全に失恋した。
自覚すんの遅すぎか。
―――
結婚式から3ヶ月くらい経った。
俺は未だに失恋を引きずっていた。何をしても楽しくないし、食事はあまり喉を通らないし、眠れない夜も多くてだいぶ痩せた。
そんないつまでも女々しい俺は
20歳の大学生だ。『
俺が20歳ということは、1コ上の由美先輩と二階堂先輩は21歳で結婚したということだ。めっちゃ早いな! 早すぎ!
二階堂先輩プロだし経済的には問題ないだろうけどさ。
俺は今まで一度も彼女とかいたことがない。
好きになった女性も由美先輩だけ。もちろん女性に好かれたこともない。
まあ、男友達ならいるから別にいいけどさ。
俺は今、学食でその男友達と一緒にランチ中だ。
「あ〜あ、梨花ちゃんも彼氏いるらしいぜ〜! ああ、辛ぇ!」
狙ってた女子に彼氏がいて大ダメージを負っているこの男が俺の友達、
平助も彼女いたことない。仲間だ。
高校生の頃から友達。ちなみにこいつのアダ名はスケベ。こいつの名前の平助を逆にしたら助平だからだ。ひどいアダ名だ。
こいつ自身はスケベと呼ばれるのを気にしてないみたいだが、俺はそんな呼び方しない。
好きな女の子に彼氏がいて辛い気持ちは痛いほどわかるけど、もうちょっと声のボリューム抑えてくれねぇかな。うるさくて周りの人たちの注目浴びちまってるんだわ。
「くっそ〜、彼女欲しいなぁ! マジで欲しい!」
「……へぇ、そっか……」
「んだよ明良、その微妙な反応は! お前も彼女欲しいだろ⁉︎」
「……んー……俺はしばらく恋愛とかいいわ」
「まさかお前、一ノ瀬先輩のことまだ引きずってんのか?」
「うっ……」
何も言い返せない。
「お前さぁ、一ノ瀬先輩はもう結婚したんだからさ、いいかげん切り替えろって」
「わかってるよ……」
「学生時代は恋愛する大チャンスだぜ? 結婚した女をいつまでも想ってるなんて時間がもったいねぇだろ!」
「それもわかってるが、今は恋愛とか女とかそんな気分にはなれねぇんだよ、ほっといてくれ」
「はぁ……お前けっこう頑固なところあるからなぁ、これは立ち直るまで時間がかかりそうだな。そんなに一ノ瀬先輩が好きか」
「ああ」
それに関しては迷わず即答する。
「まあ、お前が一ノ瀬先輩に執着する気持ちもよくわかるよ。一ノ瀬先輩おっぱいでけぇもんな〜。あのおっぱいを好き放題できる二階堂先輩が羨ましいッ!!」
「……」
こいつがスケベってアダ名つけられてるの酷いとは思ってるんだが、こいつ実際にスケベだからなぁ。
「何黙ってんだよ明良。一ノ瀬先輩おっぱいデカくて最高だろうが、お前もそう思うだろ?」
「……まあそれは否定しねぇが、お前と違って俺はカラダ目当てとかじゃねぇからな。
俺は由美先輩の笑顔にすごく元気づけられたんだ。サッカー部にいた頃、練習がキツすぎて辛くて何度も辞めようと思ったが、由美先輩がいつも優しくしてくれて俺は何度も救われた。それでいつの間にか大好きになってたんだよ」
「あーはいはい、お前が一ノ瀬先輩を好きになった理由はもう耳にタコができるくらい聞いたから」
平助は耳をほじりながら呆れたようにため息をついた。
「あーあ、マジで彼女欲しい!」
「それさっきも聞いたよ。そして俺は恋愛とかいいって言っただろうが」
「なぁ明良、どっちが先に彼女できるか俺と勝負しねぇか⁉︎」
「断る」
「うわ即答かよ」
「そんなもん競うもんじゃねぇしどうでもいい」
「へぇ、俺に負けるのが怖ぇか?」
「そんなやっすい挑発には乗らねぇ」
平助は基本的にはいいヤツだが基本的に女の話しかしねぇのがタマにキズだな。
失恋したばかりの俺には女の話とかキツイんだよ、空気読めや。
ウチの大学は全寮制で、俺が利用してる学生寮は
事件が起きた。
なんと七塚寮の管理人が、電車内で下半身を露出し逮捕されるという事件が起きたのだ。
管理人は50代のおっさんで女癖が悪い噂はよく耳にしてたが、まさか逮捕されるとは……
急に管理人がいなくなり、寮生は学生寮の共用スペースに集合した。
寮生は俺も含めて全部で10人。平助も同じ寮だ。
「やべぇことになっちまったな……」
「この寮どうなるんだ……」
寮生たちが不安そうにしている。そりゃそうか。もう1年以上使ってる寮でいきなりこんなことが起きたんだから。
管理人のおっさんもやったことは許されねぇがたくさん世話になったしな……みんなショックは隠せない。
「それが、実は俺この寮がどうなるか聞いたんだけどよ」
寮生の1人がそう言って手を上げた。俺たち全員その寮生に注目した。
「今日から新しい管理人来るみたいだぜ」
「おぉ、そうか。対応早ぇな」
「新しい管理人か……前の管理人ドスケベだけど優秀だったからな……新しい管理人大丈夫かな……」
「管理人どんなヤツなんだろ……怖いヤツじゃないといいが……」
新しい管理人が来ることになったみたいだが、それはそれで寮生のみんなに不安そうな空気が充満した。
「で、その新しい管理人ってどんなヤツなんだ?」
俺は一番気になることを尋ねた。
「ああそれがよ、なんと女子高生らしいぜ」
「女子高生⁉︎⁉︎⁉︎」
「女子高生⁉︎」
「女子高生ぇ⁉︎⁉︎⁉︎」
うるせぇよお前ら、何回も言うな。
ついさっきまでどんよりと暗い空気だったはずだが女子高生というワードが出た途端、ガラッと空気が一変。マイナスなモヤモヤを一気に吹き飛ばした。
平助をチラッと見る。平助も嬉しそうに顔を緩ませている。きめぇ。
男ならみんな大好き、女子高生か……前の管理人とか一瞬でなかったことになるインパクトだったようだ。露出狂変態おっさん、哀れ哀れ。
みんな嬉しそうなのを水差すのは申し訳ないが、俺はどうしても腑に落ちないところがあった。
「おい待てよ、女子高生ってどういうことだ? ここは大学で、男子寮だぜ? なんで女子高生なんだよ」
俺は聞かずにはいられなかった。
「いや俺も詳しくは知らんが……その女子高生は十鳥大の学長の孫娘らしくてな、その子自らここの管理人をやるって言い出したみたいだぞ」
「その女子高生自らやると言い出した……? 男子寮の管理人を? なんで? 意味がわからん。
ていうか管理人って女子高生でもなれるのか? 聞いたことないぞ女子高生の管理人なんて」
「さあ、学長の孫だからOKみたいな感じなんじゃねぇの? 知らんけど。
十鳥大付属高校の生徒みたいだから、学校が終わったらすぐ来れるってさ」
十鳥大付属高校は十鳥大のとなりにある高校だ。となりの学校なら確かにすぐ来れるが……
……何もかもがよくわからんが、とにかくウチの学生寮の新しい管理人は女子高生らしい。
意味わかんねぇし納得できないが、決まったものは仕方ない。
午後4時頃、そろそろ十鳥大付属高校の下校時刻だが……
「来たー! 来たぞー!」
寮生の1人が叫んだ。女子高生が七塚寮に来たのだろう。
平助がシュババッ! って感じで寮の入り口に向かった。速っ。速ぇよ。そんなに女子高生が来たのが嬉しいのかよ。
他の寮生もドタバタと激しく音を立てて入り口に向かっていく。
凄まじいスピードで入り口に集まってやがるな、ハイエナみてぇだな。
まあ俺だけスルーするわけにもいかないよな、挨拶くらいはしないと。
俺も部屋から出てみんなについていく。
入り口到着。
俺が到着するのとほとんど同時に、寮のドアがガチャと開いた。
十鳥大付属高校のブレザー制服に身を包んだ、1人の女の子がやってきた。
制服姿、確かに女子高生だ。制服のコスプレをしている可能性もゼロではないが、そんなことはどうでもいい。
その女の子を見た俺は、どうしても言いたいことが一つあった。
……こいつ、なんで木刀持ってんの?
―――――――――
作者です。
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