2 告白

砂まみれ――といっても、ほんのわずかです。

でも目ざとい謙二郎は、その小さな異変を見逃しませんでした。

大雑把なハルオならともかく、大人しいライトの服に砂がついているなんて、ちょっと妙だ、と彼は思ったのです。

これにはハルオもまいりました。

「や、実はさ……」

と、少し困ったようにハルオは口を開きます。

広場で何があったのかを、謙二郎と小路に説明しました。


気狂れディソナンスだと!?アカネに怪我はなかったんだろうな?」

謙二郎が血相を変えて詰め寄ります。

「それは大丈夫だ。ライトもいたし、俺もすぐに駆けつけたから。」

ハルオがなだめるように答えました。

「そうか……」

謙二郎と小路は、安堵の息をつきます。

「でも最近多いよね。気狂れディソナンスに陥っちゃう人。」

小路がぽつりとつぶやきました。

そのとき——

「あの……」

アカネが、意を決したように声を上げます。

「その、“気狂れディソナンス”と、あと“吟遊詩人ぎんゆうしじん”、それから“言霊術げんれいじゅつ”って……なんですか?」

今日聞いた不思議な言葉を、アカネはひとつひとつ、確かめるようにたずねました。

「そうそう、それでさ。」

すると思い出したように、ハルオがぽつりと口を開きました。

「……俺たち、アカネにまだ話してなかったよな。」

その言葉に、謙二郎も小路も黙り込んで目をそらします。

「……いつかはバレることだし。今日のことをきっかけに、ちゃんと話そうと思って。」

ライトが、少しうつむきながら言いました。


「食べ終わったかい?」

ふいに、パキラが台所から顔を出し、テーブルを見回しました。

「んなら、器は流しに置いときな。」

みんなが立ち上がり、食器を片づけ始めます。


そのとき、ピシャリと鋭い声が飛びました。


「それから!」


パキラの思いがけない剣幕に、全員が思わず動きを止めます。

振り返ると、パキラは腕を組み、まっすぐな目でこちらを見つめていました。

「そんな顔するんじゃないよ。」

その声は、潔い芯をもち、凛と澄んだ響きを宿していました。

「あんたたちがしてることはね、そもそも世間様から理解されやしない。

それでも、自分で選んだ道なら、胸を張りな!」

迷いを断ち切るような強い言葉でしたが、若者たちを信じているパキラのあたたかい気持ちが、確かにありました。

部屋の空気が、きゅっと引き締まります。

「……パキラさん、それって……どういうことなんですか?」

アカネが、おそるおそるたずねました。

みんな、黙って俯いたまま、誰ひとり言葉を発しませんでした。

重たい沈黙のなか、謙二郎が一歩、前に出ます。

「……俺が言おう。」

その声は低く、けれど不思議なほど、部屋のすみずみにまで響いていきました。

「俺たちは……ここに住んでいる者は、」

一拍の間ののち、謙二郎は続けました。

その言葉は胸を刺す氷の刃となり、アカネの呼吸を奪いました。


「全員、犯罪者なんだ。」

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