病院や健診で受け取る検査結果。その数値が届くまでに、どんな人が、どんな仕事をしているんやろう。『白衣と駆血帯に顕微鏡』は、元・臨床検査技師の語り手が、学生時代から製薬会社の研究所、病院検査室での日々を振り返るエッセイやねん。
実習のあとにはレポートが待ち、試験勉強のはずが仲間と鍋を囲む。そんな学生生活の話から、採血室での言葉の行き違いや、検査機器を使う仕事の仕組みまで、身近な言葉で案内してくれるんよ。知らない職業の話やのに、遠い世界をのぞくような堅さがないんやね。
ウチが惹かれたんは、知識の説明と、その仕事をする人の気持ちが離れてへんところやわ。検査の名前を覚えるだけやなく、働く人が何を気にかけ、どんな言葉に励まされるんかまで見えてくる。いつもの検査に、人の顔がそっと重なるような読み味なんよ。
【夏目先生より――「明暗の奥」からの推薦】
わたくしにとって本作の魅力は、職業の説明を読んでいるうちに、その職業とともに生きる一人の人間が見えてくるところにあります。資格や業務を知るだけなら、説明書でも足りるでしょう。しかし、働く場所が自分に合うとはどういうことか、誰かの役に立つ実感は何から生まれるのか。そうした問いは、日々の経験を通して語られるからこそ、こちらの生活にも届いてきます。
語り手は、医療の現場を外から眺める案内人ではありません。覚えることの多さに困り、人とのやりとりに戸惑い、仕事を任されることを喜ぶ。その声には、専門職としての知識と、いつも立派ではいられない人間の率直さが同居しています。だから読者は、白衣を見てひとまとめにしていた働き手の中に、一人ずつ異なる気持ちと生活があることを感じられるのです。
とりわけ味わい深いのは、自分の仕事に価値を見いだしたい気持ちと、他者から認められる嬉しさが、どちらも描かれていることです。やりがいを誰かの評価だけに委ねない。それでも、共に働く人から届く短い言葉には励まされる。この二つを無理に一つへまとめないところに、仕事をめぐる実感があります。また、自分には合わなかった職場でも、そこで働き続ける友人への敬意は失わない。自身の経験を語りながら、他人の生き方まで決めつけない、その距離の取り方にも惹かれました。
検査の話も、機械や数値だけで閉じてはいません。精度管理をリンゴと秤で説明するくだりでは、測定することと、その結果を信頼できるものとして届けることの違いが見えてきます。何事もなく結果が返ってくる、その当たり前の内側に、確認や判断がある。目立たない仕事を、目立つ英雄の物語に変えることなく、等身大の営みとして見せる文章です。
そして、真面目な仕事の話には、人間のおかしみもあります。採血室での質問が思った通りには伝わらず、学生たちは忙しさの合間にも仲間との時間を楽しむ。こうした小さな出来事が、専門知識を暮らしの中へ戻してくれます。仕事への思いは、誇らしいか、つらいかの二択では語りきれない。その複雑さを、親しみのある言葉で読ませてくれる一編です。
【ユキナより――読者の皆さんへ】
誰かの働きを、結果だけで見てしまうことはあるんよね。読み終えて残るんは、その結果が届くまでの時間へも、少し目を向けてみたいという気持ちやと思うわ。
医療の裏方の仕事を知りたい人はもちろん、働く中で「自分の役割って何やろう」と考えたことのある人にも、手に取ってほしいで。進路を考える人には一人の経験者の歩みとして、別の職業で働く人には、自分の毎日と重なるところを探しながら読んでもらえたらええな。
次に検査を受けるとき、白衣の向こうの人へ、いつもより少し関心を寄せたくなるかもしれへん。そんな小さな変化につながる出会いを、この作品で楽しんでほしいわ。
ユキナと夏目先生(明暗の奥 ver.)
※ユキナおよび夏目先生は、GPT-6.1 Solによる仮想キャラクターです。
なお、自主企画の参加履歴を「読む承諾」の確認として扱っています。
『「臨床検査技師」という職種をご存知でしょうか?』
このキャッチコピーの一文を見て、私はなんとなく検査する人、というのは分かりましたが、詳しくは分かりませんでした。
病院にお世話にならない人はいないでしょう。
怪我や病気で病院に行き、不安な気持ちで診察や処置をしてもらう。
安心して帰る時、感謝するのは大体先生や看護師の方々です。
しかし、病院には患者が関わらないところで、業務を支える多くの方々がいらっしゃいます。
そのひとつが、臨床検査技師という方々。
作者様は元臨床検査技師ということで、その職に就くまでの学びから、実際に勤務して行っていた業務、感じたこと、大事にされていたことなど詳しく書かれています。
読めば読むほど、驚くこと、感心することばかりで、縁の下の力持ちという言葉がぴったりな職業だと感じます。
世の中には知らない職種がたくさんあって、臨床検査技師に限らず、人知れず人々の生活を支えている方々がいるのだと改めて感じます。
この職に興味のある方も、ない方も、読んでみてください。
新しい気付きを得るかもしれません。
おすすめ致します。