使者が帯方郡から倭に行くときは、海岸にそって船を進め狗邪韓国へ行く。

　そこから初めて海を渡って対馬につく。良い田はない。

　また、南へ海を渡ると壱岐につく。若干の田はある。

　もう一度海を渡って末廬国につく。平地はなくて、みんな魚介類を取っている。

　南東（現代地図で東）に向けて歩むと、五百里で伊都国につく。そこから南東（現代地図で東南東）百里で奴国につく。そして奴国から東（現代地図で北東）に百里で不弥国につく。

　さてここまでが、使者が歩いていける国である。

　聞くところによると、狗邪韓国から船で南（現代地図で南東）の方向に二十日行ったところに投馬国があるらしい。

　同じように船で南の方向に十日行ったところに邪馬台国はあるらしい。伊都国から歩くと一か月くらいかかるようだ。

　女王国より北（現代地図で南西から北を通って北東）にあって戸数や距離方角がわかるのはそれくらいで、ほかの国のことは良くわからない。

　だって、行ってないも～ん。

　さて。

　帯方郡の正規の使者が通るルートは最も安全・確実なルート。でも、常日頃から船で往来している一般の人々が、いちいち対馬・壱岐に寄港しただろうか？持衰（じさい）が設けられたのは、中国への使者が立つ時だけのようだし。

　同じ目的地に着くとしても、例えば大使館の高級車と車通勤の軽自動車だったら、通る道も通り方も違う、そんな違いはなかっただろうか。

　朝鮮半島からの出港で、対馬の北端にいったん寄港したとする。そこから対馬海流とほぼ直角に壱岐に向かうのと、対馬海流に乗って山陰地方に向かうのはどっちが合理的なのだろう。

　そもそも、九州に近いからと言って釜山から出港したとは限らない。もっと西側の島を出港して対馬海流を利用した可能性もあると思う。

　実際に、対馬の縄文遺跡は東側よりも西側に多い。

　きっと、九州から朝鮮半島に渡る方が危険だっただろう。壱岐を通るのではなく平戸辺りから西へ漕ぎ出して、直接対馬に寄港する方が安全であるような気がする。

　離岸流にあったら横に泳げ、という、あんなイメージ。海流だけじゃなくて、風の影響もあっただろうけれど。

　と思っていたら、九州本土から壱岐・対馬を経由して釜山へカヤックで渡った人がいた。凄い。現代人だから夜間航行はしなかったみたいだけど、縄文時代はどうだろう。

　稲が日本へ渡ってきたのは、縄文後期よりはるか昔。その時代に大海を越える技術があったのだから、夜間航行は可能だったと思う。

　フィリピンからカヌーで2500Kmを30日かけて帰還した9人の兵隊さんがいた、とか実験航海で44日かかった、なんて事例もあるらしいし。

　ちなみに、九州と朝鮮半島との距離は200Kｍ程度である。