男よ!トイレを抱いて死ね!

縞間かおる

第1話 初めて付き合った男

 初めて付き合った男からドライブに誘われ、目一杯おしゃれして迎えに来たクルマに乗り込んだら……クルマの中は“ドリンクバー”状態だった。


 コーヒーや紅茶を詰めた水筒が10本もあり、男のウンチクと共にそれを連続で飲まされる。そのトリである10本目の“コピ・ルアク”が詰まった水筒を男が取り出した頃には……高速道路の渋滞が酷くなりクルマは殆ど前に進まなくなった。

 そして……コーヒーや紅茶を9杯も飲まされた私の尿意も冷や汗と共に酷くなっていた。


 私は鼻を膨らませてウンチクを語ろうとする男に「次のサービスエリアへ入って欲しい」と懇願し、男は途端に不機嫌になった。


 それからお互い無言の長い時間が過ぎ、ようやくサービスエリアへ辿り着き、やっとの思いでクルマから出た私を待ち受けていたのは女子トイレの長い行列で、目の前が真っ暗になって、その場にへたり込んだ。

 クルマから降りる私を一瞥した男の物凄く不機嫌な顔も目の前にチラつくし……

 もう背に腹は代えられない!!


 私は顔を伏せ、男子トイレへ駈け込んだ。


 やっとの思いで、駐車エリアに戻ってみると……別のクルマが停まっている。

「えっ?! 場所を間違えた??」

 と戸惑っているとスマホにメッセが入った。


『男女の見境の無い下品な女の乗る席は無い!』


 私はサービスエリアに放置されたのだった。

 それからどんな苦労をして家へ帰ったのかは敢えて書かないが……に不名誉な噂まで流されて……私は何年か暗い時代を過ごし、男と付き合う事も無かった。


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