第54話 父が語るジョージ
ジョージの行動は、要約すればその通りだった。
「ご学友に抜擢されたのが、直接の理由だろう。王族と近しい間柄になれる。まあ、筆頭公爵家の入婿ともなれば、財も権力も思いのままと思ったのだろう」
多分、その通りだろう。
父は、あまりいい顔をしていなかった。
「ハンナとの婚約も、同じような考えだったんだろうな。うちが富豪だから」
富豪……。
しかし、ハンナにその実感はなかった。
ハンナの家はこぢんまりとしていた。使用人の数も少なく、とても家庭的な雰囲気だった。
弟たちが幼かったので、母もあまり出歩くことはなく、父がたまに着飾って現れる時は、仕事なのだと思っていた。
「公爵家なら、家格は問題にならないくらいウチよりいいし、財産は莫大だ。ずっと条件がいいように思えたんだろう。それに一人娘だ。自分が公爵になれるとでも勘違いしたんだろう」
「なれないのですか?」
父が、ハンナをちょっと驚いたような目付きで眺めた。
「なれませんよ。ただ、実質、公爵家の中で采配を振るうのは婿殿だろうね。大事な妻が何もしなくても済むように、頑張るからね。そのための入婿だ。特に、格下の侯爵家令息なら、
果たしてジョージはそこまで想像していただろうか。
「自分が采配を振るえると言うのは、実力のある男には魅力的に思えるだろうな」
しかし、父はそこで言葉を切った。
うすら笑いを浮かべながら。
「あのジョージ君にそんな甲斐性あるのかな? 学園内の話なら、お前に意地悪したくらいで済むが、親を絡めるとなると、どうなるかな?」
「お父様……」
ハンナはちょびっと背中が寒くなってきた。なんか父、怖い。
「お前の保護者は私だ。そしてジョージの保護者は父上のキャンベル侯爵だ。格下の伯爵家など、どうとでもなると思ったんだろうな」
「それで、どうなるのですか?」
ハンナは聞きたかったことを尋ねた。
婚約がなくなることは全然構わない。むしろ、白紙に戻して欲しい。
エリックに会った後は、ジョージなんかゴミ箱に捨ててきたいくらいだ。
「確認だが、ジョージのことは好きか?」
ハンナは反射的に大きく首を張った。
「大嫌いよ」
「おや」
父は少し意外そうだった。
「大事な婚約者なのだから、もっとハンナの機嫌を取っていると思ったよ」
ハンナはまたもや首を振った。
「入学してすぐ、ご学友に選ばれたから、私と会う時間は取れないとお断りの手紙が来ました」
父は眉をしかめた。
「へえ? どう言うつもりだったんだろうな。あれだけ計算高いなら、お前を保険に取っておくと思ったのに」
「頭は悪いと思います」
ハンナは感想を述べた。
父はクスクス笑い出した。
「うん、よし。それなら、何も問題はないな」
「問題?」
「大丈夫だ。ジョージとキャンベル侯爵にうんと後悔してもらおう」
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