第41話 あなたは誰
ハドソン夫人一同はハンナの一言にシュンと黙ったが、エリックの出現にパッと華やいだ。
「エリック様!」
どうしてこんなところへ来たのかしら? ハンナの試着の時は、護衛騎士は絶対ここへきていけないとお触れが出ているはず。
しかし、エリックは何も気にせず、足早に近づいてきた。
『すてきだ。よく似合う。すごくかわいい。きれいだな』
こいつ、バカじゃね?と言うセリフがスラスラとハンナの頭の中に流れた。
目はすっかり溶けそうで、うっとりとハンナを見つめている。
ハンナもエリックのことは好きだけどね。この人とずっと一緒に居られたらと思うけどね。
世の中はそんなに甘くないでしょ?
『パーティでは、ダンスを踊ろう』
あほかー。
「エリック様、いいですか? ジョージは私との婚約破棄を私の有責で狙っています」
『そんなこと、アレクサンドラ殿下がどうにかしてくれるさ』
ハドソン夫人一同が深くうなずく。
「でも、殿下はとてもお忙しいはずです。婚約者の隣国の王太子殿下がこちらへ来られるそうですもの。私のような者に構っていられないと思いますわ」
『大丈夫。ジークムンド殿下も楽しみにしてるから』
は?
「どなたが楽しみにされてますの?」
『ジークムンドだよ。アレクサンドラ殿下の婚約者』
エリック様の返事に、ハドソン夫人が注釈を入れてくれた。
「隣国の王太子殿下のお名前はジークムンド様とおっしゃいます」
ハンナは思い出した。エリック様も隣国出身だったっけ。にしても、隣国の王太子殿下を呼び捨てはないだろう。
「お知り合いですか?」
『うん。ちょっとね。でも、ハンナ、これはダンスの練習をしなくてはいけないなー』
本気で人前で踊る気なの? エリック様は、ただでさえ、間男みたいな扱いなっているのでは?
『ほら、このドレスは裾が長いもの。僕も自信がないな。少し練習しよう。みんなの前で恥はかきたくないものね』
いや。パーティに出たくない。
『そうも言ってられないんだ。ほら、ここにキャンベル家から通知が来てるよ。はら、持ってきた』
ハンナは、エリック様が出してきた手紙を見て、びっくりした。なんでエリックが持っているのよ!
ハンナは、ニコニコしているエリック様から手紙をむしり取って、大急ぎで目を通した。
「絶対にパーティに参加するように書いてあるわ!」
そこには参加しなければ、婚約破棄とみなすと言う理不尽な言葉が書き連ねられていた。
会う機会が少ないのに(ジョージが会えないって言うからでしょう!)、他の男性と密会しているという噂さえある(ジョージもヒルダ嬢と密会しているわよね?)。この噂を否定するためにパーティは絶好の機会だし、出なかったら逆に疑惑は深まる。絶対に出席するように(命令口調は大嫌い)。ただし、エスコートはできない(なぜ?)エスコートは、格上の公爵家の令嬢のヒルダ嬢から頼まれたので(なんだとう?)
気の毒そうに、頭の上からエリックは文面を覗き込んでいた。
「人の手紙を読まないで!」
『だって、読みたくなるじゃないか。ひどい内容だな』
酷い内容ですけどね! でも、婚約者からの手紙をあなたが読むのはおかしいわ!
『ね? 僕と出よう。大丈夫。これでも、結構地位と財産はあるんだよ? 君を困らせたりしない』
息を殺して、話に聞き入っていたハドソン夫人軍団が思わず拍手した。
個人情報保護違反である。
ハンナは涙目になって、軍団を一睨みした。それからエリックに向かって、重大問題を尋ねた。
「あなたは誰?」
ハドソン軍団も一緒にハッとなって、金色の髪、濃い青い目が美しいエリック様を見つめた。
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