第31話 今も見つかっていないの
な、なんかかっこいい……。
あいつだって分かっているのに、俺は目の前の骸骨に頼ってしまいそうになり、慌てて首を振った。
冷静になれ。
ランは首を傾げて呆れたように呟いた。
「しかし、テアシはなんだってこんな得体のしれない相手とメッセージのやり取りをしたんだ?」
「あ、その相手は実は、テアシの母親なんだ……」
「はあ? ちょっと待ってくれ……」
ランの骨格は割とがっしりしてるので、大きく深呼吸でもしているのだろうか、彼の肋骨が上下に動いた。
「話の先が読めないんだが、テアシの関係者は母親なのか。間違いないのか」
「たぶん……。この間、ここへ来たんだ。テアシの母親とその妹が」
「二人で来たか。ま、それは当然だな。こんな廃校に一人で来る女はどこかのネジが外れていそうだぜ」
こんなに考えてくれる骸骨は見たことがなかったので、頼もしく思えて仕方なかった。
「このメッセージのやり取りからすると、テアシを外へ呼び出そうとしているように見えるな。どうして急に考えが変わったんだ?」
「テアシの母親たちは、俺たちの姿は全く見えていなかった」
「見えていなければなおさらだろ。このテアシが自分の娘だとどうして認識できた……。テアシはなぜ、メッセージを送ったのか。分かるか?」
「正直って分からない。テアシは物事を深く考えない子だったから……」
「さっきからテアシは何も考えないって言っているが、何も考えない子なんていやしないだろ」
ランの言葉に、俺は胸はないけど突かれた気がした。
テアシはあんまりしゃべらなかったが、いろいろ考えていたのだろうか。
俺は一方的にテアシは頭の悪い子だと決めつけていたのかもしれない。
もっと、テアシの言葉に耳を傾けたらよかった。
「メッセージはかなりの量だが、一日だけのようだ」
俺が後悔の念に駆られていると、ランの言葉に我に返った。
「えっ? そ、そんな短時間でテアシがここを出て行こうと決意したのか?」
自分と一緒にいた時間はなんだったんだ。
あれほどなついていたのに。あんなにここを出て行きたくないと言っていたのに。
「これが決め手だろ。ウキンが自分を殺した犯人だと言われた直後から、恐怖の言葉に変わってる。怖い……。お母さん、助けて……って書いてるぜ」
俺はさっぱり理解できずに頭を振った。
「どうして俺が? テアシを殺した犯人だと……。なぜ、テアシは信じたんだろう。あの二人の事、嫌そうにしていたのに」
「本当の母親だからだろうな。相手はテアシのことを理解し尽くしているんだろ」
俺はスマートフォンを返してもらい内容を確認した。
俺が徘徊している二、三時間くらいの間に二人はやり取りしていた。それはかなりな量のメッセージだった。
テアシ自ら連絡をしている。
メッセージの始まりはこうだった。
『いきなりメッセージを送ってごめんなさい。あの……、今、目を覚ましたら、ウキンがいないの。どこに行ったのか分からなくて。あたし不安で……」
と言った内容をセイラに送っている。すると、セイラはスマートフォンを触っていたのか、すぐに返事をしていた。
『どうしたの? 何があったの? あなたはレイラちゃんなの?』
『あたし……。どうしていいか分からない。ウキンがいないとあたし動けないの。怖い。ひとりぼっちは怖い』
『レイラちゃんなのね? お話、聞いてあげよっか?』
あのセイラが言うとは思えないような内容で驚く。
『あたし……ウキンに何か嫌われるようなことしちゃったのかな……』
『ウキンって誰?』
『ウキンはあたしと一緒にいてくれている……人』
『ねえ、レイラ、あなた、死んでいるのよね』
『うん……』
『成仏できないの?』
『ここにいたら成仏できないみたい』
『そこはどこなの?』
テアシは住所を送っている。それからすぐに返信がある。
『あなた本当に一人なのね?』
『うん。一人だよ。ウキンがいなくなっちゃった……』
『あなたには悪いけど、その人がいなくなってよかった。実はずっと気になっていたの。その人、もしかしたらあたしの知っている人かもしれない』
『え?』
『レイラちゃんってすごく可愛かったから、学習塾の先生に目を付けられてストーキングされていたのよ。忘れちゃった?』
『し、知らない。そんなの……』
『学生塾の先生、すごくいい人でね。あなた、彼のことがすごく好きだったのよ。でも、彼には妻子がいてね、妻子って分かる? 奥さんと子供がいたの。あの先生、奥さんよりもあなたが好きだって言って、よく家から連れ出して朝帰りばっかりしていた。その学生塾の先生はすごくいい人でね、お母さん、騙されちゃった。あなた、妊娠させられてね、それが発覚したら別れたいって言いだした。あなたが嫌がったから、茂みに連れて行かれて殺されちゃって……。お母さん、泣いたよ。涙が枯れるほど泣いた。絶対あの男を許さないって思った。そうしたら、あの男、行方不明になってね、今も見つかっていないの。その男にウキンって人、そっくりなんだけど』
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