第31話

その5




「わー、すごいご馳走だな…」



「遠慮しないで。ええと、まずはビール飲みなさいね。ああ、チヅル、後ろの冷蔵庫から冷えてるの出してあげて」



「了解~」



”高校生の部屋にビールの入った冷蔵庫って…”



またまた律也が目を点にしていると、正面のユウトも苦笑いだった。



「ヨーコさん、いきなりこれじゃあ、律也も驚いてるって」



「アハハハ…、そうね。ビビって逃げられちゃ困るから、チヅル、あんたもガツガツしちゃあダメよ(笑)」



「わかってるって。ヨーコ、早くカンパイしよう」



「おお、そうね。じゃあ、律也君、今夜はよくきてくれたわ。楽しくやりましょう。では、キラキラカップル二組の素敵な夜を祝してカンパーイ!」



”カンパーイ!”



ヨーコによるノリノリの乾杯の音頭で、4人の夜はスタートを切った。



***



「はは、二人とも、結構いけるクチみたいね。ビール、いっぱい冷えてるからね。今日は親、帰って来ないんで、安心してガンガン飲みなさい」



ヨーコはすっかりいい気分になっている様子で、すでにユウトの腕を掴んで、体を幾分もたれていた。



「チヅル、律也君、モテそうよ。ちゃんと今カノいないか、チェックしときなさいよ」



「あら、ヨーコ、ヘンなコト言わないで。いるわよ、律也君にはカノジョ。ねー、出来立ての年上女子なんだよね~~💖」



ここでまたまた、律也は目をぱちくりさせ、あまりに年上女子のイケイケぶりがぶっ飛んでいるので、ややアタマが混乱していた。



一方のユウトも、概ね予想してた彼女たちのアクションには然もあらんと言ったところではあったが…。

さすがにちょっといきなりすぎで、内心、律也が少々心配になってきたようだった。



「アハハハ…、あんた、飛ばし過ぎでしょ。じゃあ、ユウトと私も負けられないわね」



そう言って、ヨーコは目線だけ正面の二人に釘付けにし、左手を早くもユウトの右足、内もものあたりへ這わせていた…。



かくて、その夜の展開はしょっぱなから2カップルという構図で定まった。


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