第29話

その3




律也もそんな視線のユウトをじっと見つめ、どこか胸が締め付けられる思いが湧いてきた…。

しばらくしてユウトは口を開いた。



「正直言うと、児童館のトイレで君とした行為、またしたいって気持ちはあるんだ。あの刺激が忘れられなくて…。まあ、あの時の快感思いだして、しっかり定期的に自分でしてる(苦笑)」



律也は率直に嬉しかった。

ユウトが自分と同じ心情ベースでいてくれて、あの時、二人が激しくイキあった行為を思い出して、ちゃんと自慰行為に励んでいた…。

あくまで、ヨーコという年上の彼女とエッチするのとは別ものとして…。



それを彼の方から直接告白されたことで、律也の中の”純真”が肯定された気持ちになれたのだ。



”僕らのあの行為は、背徳と屈折だけで導かれたもんじゃんないんだ!



これが律也の胸中だった。



***



「オレもまた、アレを君とやりたいって欲望とはさ、いつも戦ってる気がするんだ。でも、あの時の純真な気持ちも大事にしたいってね。何しろ、ユウトの気遣いを無にしないと、自分に言い聞かせるよ」



ここで二人は視線を交わし合ったまま、しばし無言で笑みも交換した。



「…一応、最低限、チヅルさんのこと言っとくよ。苗字は小橋っていうんだ。ヨーコとは高校が一緒で、今は特定の男はいないってことだけど、真に受けないほうがいいかも。どちらかというと、遊び好きだろうね。でも、そのことを承知で、今回律也には取り持ちしたいんだ。理由は先日の川原で言ったことにつながるよ」



「ああ、ありがとう、ユウト。ちなみに、チヅルさんの第一印象、色っぽい人だなってね(微笑)」



「そうか…。ちょっと安心したかな。はは…」



二人はそこで切り上げた。



かくして3日後の夜、律也は今だ愛しい純真なキモチを抱く青島ユウトと彼の彼女がいる酒の入った場に赴くこととなった。

そこでは、ひとつの部屋の中で、自らも年上の女性と二人の時を費やすという、何ともなシュチエーションに身を投じることとなる…。





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