第25話

その5




「そうか…。うまくできたかい?」



律也は取って付けたように、こう尋ねるしかなかった。



「まあ、相手がリードしてくれたんで。そん時に、いろいろ試されて、こっちの性癖を探り入れてくるって感じでさ。あっちとしては、中1で同性と乳繰り合った年下の男と子ってことで、逆に関心持ってたみたいで…」



「ユウト、全部了解だよ。正直に言ってくれてありがとう」



「いや、もっと早く言わなくちゃって思ってたんだけど…。すまなかったね。メールとか電話ってのも気が引けたんで…。それで、そっちは彼女とかは?」



「まだいないよ。正直、焦ってるんだ…。オレ、キミよりはその性癖ってとこだと、少し屈折してる感じの自覚はあるんで。この年であんな経験して、ちゃんと君みたいに女性と人並みな営みってできるのかなって、そんな不安はあるんだ」



この時の律也はなぜか、ありのままの自分をユウトに明かすことができた。

それって…、他ならぬユウトだからこそ…とかだったのか…。



***



ユウトはそんな律也の胸の内を慮ってか、彼にしては珍しく眉間にしわを寄せた、少し険しい顔つきで彼を少しの間、じっと見つめていた。

そして、やや低いトーンで口を開いた。



「きっと好きな子ができれば…、とかって言ってやりたいけど、”あの個室”の当事者だからさ、あえて言うけど…。最初の女とのハメなら、経験を積んだ年上の方がいいと思う。やっぱりね…。単純に好きなって子ってことだと、後々アダになるリスクってあると思うんだ」



「年上か…」



ユウトの忌憚のないアドバイス…。

不思議とこの時の律也には、すっと入ってくるものがあったのだった。



***



「うん…。まあ、何もうんと年が離れてる必要はないしね。実際、オレも律也と同じような不安から、あのヨーコって人とってとこはあったんだ」



「なるほどね…」



「律也は大事なヒトだし、オレもあの児童館のことがアダになって欲しくないんで…。だから、できるなら力になるよ」



律也はユウトの気遣いがとてもうれしかった。

あの極めて稀有な”体験の川”を共に渡った、その彼だから汲んでくれることのできる、自分の内面を親身に理解してくれる思いが…。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る