第14話 二人だけの時間

その1



ユウトは仲間の輪に戻って行った。

間もなく用を足した数人もトイレから出てくると、彼らは少女たちと共に児童館を出た。



その際、ユウトは律也に手を上げてここでも合図を送ってきた。

律也も笑みを浮かべながら手で会釈を返した。



”この後、ユウトがココへ戻てきたら、二人きりでさっきの続きってことになるのかな…”



律也は先ほどの、何とも妖しい触感を思い出すと、体の芯が熱くなるのを禁じ得なかった。



***



それはコーフンとときめき…、そしてインモラルな行為への罪悪感…。

これらがミキサーで掻き混ぜられた、未知の感覚はすなわち尋常ならざる刺激ということだった。



彼はこの時点で、様々な眠っていたモノを目覚めさせたターニングポイントを自覚し、もう”その先”を迎え入れている自己も認識していたのだ。



ユウトを待つ間の長椅子に腰を下ろしてのわずかな時間は、彼にとって、禁断の部屋へ自らの意思(欲望?)で踏み込もうとする待合室での待機に相当していた。



何しろ、12歳の少年にとってのそのハードル感は、とてつもなくオモいものだったに違いない。

よって、待合での心と頭の整理は必要だった。

当然ながら…。



***



ユウトは確かにココへ戻ってきてくれた。

約束通り…。



長椅子から立ち上がった律也は、少し雨に濡れたユウトの正面へと数歩前に出た。

二人は無言でニコニコしながら顔を見わせている。



この時のユウトと律也…、ふたつのカラダは約2M離れていた…。

これは、 何ともな距離感であったろう。



「2階へ行こうよ。図書コーナーでさ…」



ユウトはさらっとそう言った。

律也は「うん」と言って頷いた。



地味で淡白であるが、二人のやり取りはどこかはじけるようなテンポ感を放っていた。



***



二人は並んで階段を上り、図書コーナーの一番奥に、窓を背を向けた態勢で隣り合って座った。



”ここなら大丈夫そうだ…”



二人はほぼ同じことを胸の中で呟くのだった…。



そして背にした窓の外では、すでに雨は上がっていた。








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