君じゃない君がいい③
涼風視点
涼風もクリスマスに予定はなかったが、家で引きこもっているのは勿体ない。 ただこの寒さだけは肌に突き刺さるようで辛い。
「・・・寒過ぎるわ」
涼風は空を見上げた。 雲一つない青空が綺麗に目に写る。
「これでホワイトクリスマスだったら凍え死んでしまうじゃない。 薄着でこんな寒空を歩くことになるなんて」
持っているホットチョコレートだけが凍える身体を温めてくれる。 一口飲めばその温もりが身体に染み渡る。 ただあまりに甘ったるく涼風の口には正直合わない。
お金を支払って買ったものではあるが、少し冷めてきたこともあり半分程飲んだところでゴミ箱へ捨てた。 そうすると今度は寒さが気になってくる。
―――丁度いいからまずはアウターの調達ね。
羽織るものを求めに服屋へ向かった。
「いらっしゃいませー! どのようなものをお探しですか?」
少し高級な店へ入ったからか早速店員が話しかけてきた。
「とにかく寒いから私に合うアウターを選んでほしいの」
「かしこまりました」
店員は涼風の姿を一目見ると歩き始めた。 店員に付いていき一着の黒いコートを渡される。
「こちらはどうでしょう?」
見せられたのはゴージャスな黒いレースで飾られたジャケットだった。 受け取ってはみるもどうも好みではない。
「ふぅん、なかなかに派手ね。 確かに私の格好からしたらこんなところになるかもしれないけど」
「えぇ、とてもお似合いになるかと」
「でも寒さ凌ぎにはそぐわない気がするわ。 一体おいくらなの?」
「三万円です」
「手頃なところね。 もう少し厚手でいいものはないかしら?」
「でしたら・・・」
「できれば前を閉めても綺麗に見えるものがいいわ」
新しい場所へと案内される。 涼風はとことんプライドが高かった。
―――可愛く見られるのは嬉しいことだけど少しショックだわ。
―――でも今の私の服装を見てちゃんと選んではくれたのよね。
「こちらはどうでしょう?」
見せられたのは白い上品なコートだった。
「あら、結構いいじゃない。 これにするわ」
「ありがとうございます。 ではこちらへ」
十万円の出費は涼風にとって安い買い物ではなかったが、気に入ったため涼風は機嫌がよくなった。 そもそも大学生である涼風からしてみれば三万円でも安くはない。
ただ安くて気に入らないものを買うくらいなら高くても自分のほしいものを手に入れる、涼風はそういう考え方をしていた。
「そのコートは今着ていくからタグは切ってちょうだい」
店員に店の外まで見送られた。 本物の高級ショップではないため十万円のコートはなかなかないものなのだろう。
「ありがとうございました!」
店員の声を背後にコートを着て前を閉める。
―――これでとりあえずマシになったわね。
―――口の中に残る甘さは気になるけど身体を温めてくれたんだから贅沢は言わないことにしましょう。
―――きっとクリスマスで浮かれていたからこうなってしまったのね。
―――でもそのおかげでいい買い物ができたわけだし。
次にお洒落なカフェを発見した。
「丁度サッパリしたものがほしいし今日は贅沢でもしちゃおうかしら」
クリスマスのせいか人が多く外まで列ができている。 その列に並んでいた時のことだった。
「あ! 涼風さん!!」
声の方を見ると笑顔で手を振っている匠の姿があった。 涼風は最初匠の顔をジッと見ていたが、徐々に全身を舐めるように見渡し始めた。 そして楽しそうな笑顔と大きく振る手に視線が固定される。
「・・・また貴方?」
「匠でいいですよ! 涼風さんは遠くからでもすぐに分かりますね! カッコ良いですもん!」
―――丸見えの外に並んでいたのが悪かったわね。
「それにクリスマスに会えるなんて本当に嬉しいです!」
「匠くんは今日一緒に過ごせる友達はいないの?」
「はは。 誘ってみたんですが全て断られちゃったんですよ」
「ふぅん?」
―――匠くんのタイプ的にたくさんの友達がいてクリスマスを一緒に過ごしたいと思う女の子もいるでしょうに。
「残念ながら誘ったみんなが全員彼女や彼氏持ちだったんです。 きっと今頃デートでしょう」
正直嘘だろうなと思いつつもその理由に納得した。
「クリスマスだからといってこんなに寒い中わざわざデートなんてしなくても」
「そういう涼風さんも今一人で外出しているじゃないですか」
「別に外出したくてしているわけじゃないわよ。 ・・・折角のクリスマスだから少しくらい楽しんでみてもいいかなと思っただけで」
「なら僕が今日一緒にいますよ!」
キラキラとした笑顔で言われるも涼風は唖然とする。
「匠くんと・・・? ごめんなさい、どうしてそうなるのか理解できない」
「僕は今日一日空いているので!」
「私は貴方のような子供には興味がない、って何度も言っているわよね?」
そう言うと匠は分かりやすくうなだれてみせた。
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