第2話 幽霊さんと冥界コーヒー
ここは喫茶ユメツキ。
日暮れとともにひっそり開き、
朝焼けのころ静かに閉じる、
小さな不思議な喫茶店。
どんな方でも、
そっとひと息つける場所です。
こんばんは。 ……また会えましたね。
ふふ、
今夜も静かに過ごしていってください。
今夜のお客さまは、
白いアンティークドレスを着た
若い女性です。
窓から差し込む月明かりが、
そのドレスに柔らかく反射して、
とても綺麗です。
「いらっしゃいませ。
お飲み物はどうされますか?」
少し迷った様子で、
彼女は「コーヒーを」
と小さな声で頼みました。
「冥界コーヒーですね。
少しお待ちください。」
冥界コーヒーは、少しビターで、
それでいて優しい甘さが残る一杯。
不思議と、
飲む人それぞれの思い出に寄り添う味
だと言われています。
一口、口に含むと、
彼女はふっと微笑んで、
懐かしそうに話し始めました。
「昔……よく、
あの人と一緒に飲んでいました。
暖かくて、ほろ苦くて……」
静かに語られるその思い出は、
きっと大切な記憶なのでしょう。
コーヒーの香りと共に、
少しだけその時間が蘇るような、
そんな夜です。
飲み終えた彼女は、
来た時よりも少し朗らかな表情で、
そっと立ち上がりました。
「……ありがとう。
なんだか、
心が軽くなった気がします。」
月明かりが照らす道を、
彼女はゆっくりと歩いて
帰っていきました。
あなたの時間が、
やわらかく流れますように。
ここ、喫茶ユメツキで、
またお会いしましょう。
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