喫茶店「ユメツキ」の不思議な話

晴 風月

第1話 ようこそ、喫茶ユメツキへ

ここは喫茶ユメツキ-

日暮れとともにひっそり開き、

朝焼けのころ静かに閉じる、

小さな不思議な喫茶店。

どんな方でも、

そっとひと息つける場所です。




こんばんは。

……あなた、今日が初めてですね。

ふふ、大丈夫。

驚かなくても平気ですよ。

ようこそ、喫茶ユメツキへ。


小さなお店なんです。

席もカウンターだけ。

けれど、ほら、

あの窓から月が見えるでしょう?

あの窓があるだけで、

ずいぶん静かな気持ちになれるんです。

不思議ですね。


さて、まずはお飲み物をどうぞ。

メニューは見た目こそ普通ですが、

注文されたものは“今のあなたにとって、

いちばん心に合う味”でお出しします。



……コーヒーですね。少々お待ちください。





(小さくカップを置く音)


お待たせしました。

……香り、いかがですか?

ふと、

昔の誰かを思い出したりしませんか。

そんなふうに、ここではときどき、

忘れていたものが

戻ってくることもあるんです。


ああ、そうそう。

ひとつだけ、

ユメツキのルールをお伝えしておきますね。

このお店では、

誰のことも否定したり、

追い出したりはしません。

人間でも、そうでない方でも。

ここにいる間は、

誰もがただのお客さま――

それだけなんです。


だから、安心してくださいね。

ここでは、どんなお話も大丈夫。

声に出さず、

ただ黙って過ごすのも自由です。







……ふふ、

少し長く話しすぎてしまいました。


でも、お話しできて、嬉しかったです。



あなたの時間が、

やわらかく流れますように。

ここ、喫茶ユメツキで、

またお会いしましょう。

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