14. 終着

 ふと気づくと列車は駅についていた。俺は立ち上がり彼を担いで列車を降りた。

「さあ着いたぞ。起きろ。」

「うぅ……」

彼はぼんやりと俺を見たが、やはりすぐに眠ってしまった。月明かりがやけに眩しくて、僅かにできた影に隠れながら、まるで駆け落ちをする男女のように街を歩いた。街を歩く人々はみな酒場からの帰りか、こちらの方など見えていないかのようで、それが心地よかった。すでに消灯された館に戻るとルーグがやってきた。

「オーナー、その子は?」

「ルティだ。死のうとしてやがった。」

ルーグにルティの話をしたことはなかった。いや、ルーグだけではない。館の住人には、そんなつもりはなかったが、町にはルティに会いに行っていたことをを隠していた。その時点ではルティとの関係をこれ以上深く持つつもりは無かったのだ。

俺は彼にとって不必要だと信じたかった。ただ、今は違う。今は、彼をこうしてしまったのは紛れもなく自分の責任だという自覚があった。

なんとしてでも彼をこの世に繋ぎ止めなくてはならないと思った。心に大きく空いた穴を埋めてやれるのは"愛"なるものにほかならない。これが愛なのかはわからないが、俺の知っている愛という名のものはこれしかなかったのだ。

がむしゃらに彼を抱く。

もう二度と、手放したくはない。もう、失うわけにはいかない。

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アケルの証言 @Turkey_in_the_city

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