約定の花乙女〜冬と桜を取り戻す為、神様との結婚が不可欠です!?〜
長月そら葉
第1章 桜守と桜の神
出会う運命
第1話 冬を失った国
時は、いつかの時代、日本国。
五年程前、日本から四季の一つが消えた。気温が一定より下がらなくなり、雪が降らなくなり、専門家たちが日本の四季から冬が消えたと発表したのだ。
地球温暖化の影響かとも騒がれたが、他国には冬がある。つまり、日本国からのみ冬がなくなってしまった。
人々は最初の数年こそ慌てふためいたが、徐々に冬がない四季が普通になっていった。様々な天候の変化や災害もあったが、なくなった冬を戻すことは、人間には不可能だと皆匙を投げていたから。
「……また今年も、桜は咲かないのね」
けれど、わたしは知っている。冬が消えたと同時に咲かなくなった神木の桜を守る、桜守の家に生まれたわたしたちは。
「千年前の、神と桜守の契約。それが果たされれば、冬は戻って来る」
枯れ木同然ながら、神木は生きている。冬を失った国から消えた桜の花。その全てを司る神の桜は、今日も乾いた音をたてて風に揺られている。
この時はまさか、自分の身にあんなことが起こるなんて思いもしなかった。
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