【何が眩しいの?】

「ではお尋ねします。貴女にご家族はお有りですか?」



「ええ、夫と子供がいます。」



さらりと言った。

その夫と子供の前から姿を消したくせに……。



「そのご家族はどちらに?なぜ一人で食事を?」



しばし沈黙した後、彼女は答えた。



「今は訳あって離れて暮らしています。」



訳あって──?

私はその訳が知りたい。

尋ねたら話してくれるのだろうか……?



「その状況……まさに私の悩みと同様……。是非ともその訳をお聞かせ願いたい……。」



「え、同じ状況……?」



「はい。恥ずかしながら妻に逃げられまして……。しかしその理由が全く分からないのです。それで悩んでいたのですが、同じ状況の貴女なら妻の気持ちが理解できますか……?」



その質問に彼女は戸惑い、そして謝罪した。



「ごめんなさい……。」



「それは……何の謝罪ですか……?」



私の正体に気づいて謝罪してるのか?



「私には奥様の気持ちは分かりません。私が家族から……夫から離れた理由は特殊な事ですので……。」



さっぱり分からない。

一般の夫婦とは違う理由で逃げたと……?



「特殊とはどんな……?貴女は御主人の事を……どう……?」



「どう……と言いますと?」



質問の意味が分からなかったらしい。

ここははっきり尋ねてみよう。



「御主人の事をどう思っているかです。」



「もちろん愛してますわ。」



即答した彼女にドキッとした。

私は愛されていた。

サンジュニャーに……妻に愛されていた。


ならば何故……。

なぜ私から離れた……?



「愛しているのなら……なぜ離れて暮らしている……?」



「ですからそれは特殊な理由で……」



「教えてくれ!その理由を教えてくれ!なぜ愛していながら離れたのか!私には理解できない!」



彼女は声を荒げた私に驚き、そしてぽつりと言った。



「眩しかったんです……。」



「は……?」



思わずマヌケな声を出してしまった。



「ま、眩しいとは……一体……」



「私の夫はスーリヤなんです。」



苦笑しながら彼女は言った。



「それは分かっている……。だが眩しいとは何だ……?何が眩しいのだ……?」



「え……?分かっている……?貴方は私の事を知っていたんですか……?」



「当たり前だ。だからこうして接触を──」



考えながら返事をしていてハッとした。

考えていた事を無意識に口にしていたのだ。



「あ、貴方は誰なんです!?私に何を!」



サンジュニャーは得体の知れない男に恐怖し、ゆっくりと後ずさった。

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