第7話


 末光邸からの帰り道、誰もいない地下鉄の中で槻本は大きなため息をついた。


「面倒な人でしたね....途中から何を言ってるのか全く理解できませんでした....ちぐはぐというか、物量で押し通そうしているというか。そもそも第三次世界大戦なんて関係あります?」

「まあ、確かに....私の元にもああいったような依頼者は来るけれど、彼よりは筋が通っているよ」


 天国もやれやれ、と申し訳程度に取っていたメモを見た。


「結局心当たりに関して一切触れていませんでしたし、まあ、多分反対派の策略だとか言うのでしょうけど....」


 槻本は数十分前の演説を思い出し、より一層疲れが増すのを感じた。



「そういえば、彼の父親は第三次世界大戦中に政務に就いていたと言っていたね。これで、1件目から4件目の全ての被害者がなんらかの形で第三次世界大戦に関係があることになる」

「......ああ、そう言えば」


 すさまじい情報の波の中に、そのような内容があったかもしれない。という事は、天国の言う通り1件目から3件目は自身が、4件目は父親が、それぞれ第三次世界大戦中の政治に関わっていることになる。


「となると、第三次世界大戦が何か関係あるのでしょうか」

「そう、だね。そもそも今この世にいる付喪神は第三次世界大戦中に壊されたりしたものが多いからね」

「付喪神って、100年経たないとできないんじゃないんですか?!」

「一般的にはね。ただ、強い怨念を抱いていたり、ひどい壊れ方をした物は早くに付喪神になるそうだよ」


 人間と似たようなものなのだろうか。槻本はへえ、そうなんですか、と返した。


「それで、天国さん。もうすぐ警視庁の最寄り駅に到着するのですが、この後どうされますか?」

「そうだね。私はこのまま帰ろうかな。もう遅いし、今からご挨拶と言うのは失礼じゃないかと思うからね」

「確かに....そうですね。では、僕は4名の政務中の事について調べてみます。そう言うデータは揃っているので」


 降車駅が近付き、車内にアナウンスが響いた。天国も分かりました、と頷き、立ち上がる槻本に手を振った。




「....さあ、私も少し調べてみようかな」


 誰もいなくなった電車の中で、どこからかやって来た小鳥の霊を手に乗せながら天国は呟いた。

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