悲鳴~夜明け前が一番暗い~
青野ひかり
さけび
『夜明け前が一番暗い』と誰かから聞いた。
「本当に?」
私は夜明け前を見たことがない。
この眼で見たものしか信じられない私は半信半疑だ。
「夜が暗くない白夜の地域もあるじゃない。万人に光差す朝が来るなんて嘘だ」
ひねくれている私はヘリクツな一人言を心で吐いた。
『明けない夜はない』
励ましの意味でよく使われるこの言葉が私は嫌いだ。
私が色々と拗らせた性格なのは自覚済みだ。
でも根拠のない励ましや慰めの言葉が私は今でも何より嫌いだ。
『なんとかなる』『どうにかなる』……
……
神様に見放されていたあの頃。
中学生の私。クラスでも塾でも息がしづらい。
家にいてもつらい。
こんなに生きづらいのは自分のせいだと自分を責め続けた。
(悪口を言われるのは、私が人見知りで暗い性格だから……。睨まれるのは……分からないけど、私が何か相手の気に障ることをしたんだろう……私は変わらなくちゃ。変わらないとまた嫌われる……)
自分が頑張らないとこの生き地獄からは抜け出せないと信じ、もがき続けた。
ただじっとしていても、なんともならないし、どうにかもならなかった。
私の本当の顔を誰も見てはいなかった。
表面的にキチンと動いていれば、誰も異変になど気付かない。
私自身も異変に気付かないふりをしていた。
助けを求める勇気がなく、話を聞いてくれそうな人もいなかった。
無理をして、頑張って、頑張って、学校に通い続けた。大学に入って半年後、ついに私は壊れた。
不登校にはならなかった。でも社会人には今もなれていない。
そして、私は今、何もかもがわからない。正解も不正解も。白も黒も。何か報われたのか、何に後悔しているのかも。
ただ私はまだ生きることを諦めきれないでいる。
こんな文章を書きなぐりながら生きている。
もし、私の世界が今が夜で、もし、今が夜明け前で一番暗いのだとしたら、この眼で見たい。長い夜が明けるその瞬間を。
今までに見たことがないまばゆい光を。
悲鳴~夜明け前が一番暗い~ 青野ひかり @ohagichan
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