太平洋に浮かぶ美しい島国カエルレア共和国。主人公の梓は高校時代に留学していたこの国の友人の結婚式に参列するため、八年ぶりにこの地に降り立ちます。
美しく、幸せそうに見えるこの国が、友人のミシェルの告白と八年前の留学時から成長していない不思議な少年ティオとの出会いにより、国家の陰謀に巻き込まれていく……!!
異能を持っているが故に人生を詐取され続けた子どもたちと、それを何とか助けたいと思う梓。
その壮大な物語はまるで映画を見ているかのようです。
美しいカエルレア共和国の風景が、よりこの国の闇を深くしてじわじわと怖さを映し出しているような気がします。
国も人種も生きてきた環境も違う梓が、国に詐取され続けた子どもたちをどう救うのか? そしてこの国が、本当に明るく美しい国になれるのか。
あなたもその目撃者の一人になってみませんか?
本作は【種】【花】【実】の三幕構成で、このレビューは【種】【花】までを読んだ時点での感想となります。
この二幕だけでも、ずいぶん印象の異なる作品です。【種】は物語の導入部。国際線の飛行機の機内で、主人公・梓が異国に暮らす親友から届いた結婚式の招待状を眺めていると、隣の席のロマンスグレーの紳士が外国語混じりに話しかけてくる――なんともおしゃれな幕開けです。無事に親友の家族の元へたどり着いた梓を迎えるのは、懐かしさと、そこはかとない不穏さ。その空気は、日常の中にふと忍び込んだ違和感として描かれていて、非常にリアルに感じられました。そして物語はある謎を追う展開へと転じ、サスペンスの趣を帯びてきます。
続く【花】では、その謎が一気に解き明かされていきます。まさに花が咲くかのようにです。タイトルの『CHILDREN』が示す通り、物語の鍵を握るのは子供たち。彼らは特別な力を持って生まれたがゆえに、大人たちに利用され、虐げられてきた存在です。梓は、そんな『声なき天使たち』と出会い、彼らが何を感じ、何を思っているのかを知っていきます。
梓は、そして子供たちは、互いに思いを交わすことで、葛藤を抱えながら最終的にどのような選択をするのかというのが、この物語の主題だと思います。
大人至上主義の社会に問いかけるような、社会派ファンタジーとしての顔もありつつ、読み口は比較的ライトであるとは思います。子供たち――特にティオとの繋がりや、彼との尊い約束が物語に温かさを添えており、重たくなりすぎずに読める一因となっているのかもしれません。
また、風雅ありす先生の文章は、視覚に訴えかけてくるような表現が印象的です。多彩でありながら、鮮やかすぎない、味わい深い色の世界が目に浮かぶようでした。
良質なライト文芸を求める読者に、おすすめできる一作です!
まるで海外版の壮大な大河ドラマを見ている気分でした!
本作を読み、まっさきにそう思いました。
物語の舞台は、太平洋に浮かぶ島の、ある異国。
親友の結婚式のため、日本からその国へやってきた主人公の梓は、新婦である親友からあるお願いをされます。
それは「生き別れた双子の姉を探してほしい」というものでした。
ところが、このお願いをきっかけに、梓は思わぬ展開にまきこまれていくのですが――。
架空の国の物語なのですが、描写が緻密でとてもリアルな作品です。
そのリアルさもあいまって、序盤はミステリー風な展開がとてもドキドキしました!
ところが、中盤、終盤と物語が進むにつれてSFファンタジー(それもちょっとダークなヤツです)な要素が暴かれていき、怒涛の展開に驚かされました。
ミステリーやSFが好きな方には、ぜひぜひおすすめしたい作品です!
最後に。本作のテーマにもある「大人と子供」に関して一言。
子供は、いつから大人になるのでしょう。
大人って、どうやってなれるものなのでしょう。
大人と子供の境界って見方によっては、曖昧なのかもしれない。
本作を読んで、私は自分に問いたくなったのです。
――私は、どんな大人になりたいの?――と。