第31話「そして、誰が見ていたか」
爆発から数分後。
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瓦礫と煙が立ちこめる廊下。
崩れた天井、焼けた壁、折れたコード。
静寂。いや、沈黙。音を失った世界。
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アキは地面に崩れ落ち、**泣きじゃくっていた。**
「……なんで……なんでヨウタくんが……」
「こんなの、望んでなかったのに……」
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彼女の腕の中に、ヨウタの遺体は**もうなかった。**
爆風に巻き込まれ、彼は**四散していた。**
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廊下の奥では、
リュウジとミナトが無言で立ち尽くしていた。
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「……え、今の……なに……?」
「誰が……生きてんの……?」
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ふたりとも、爆破の意味を理解していなかった。
ただ、あたりを見渡しながら、現実味のない空気に包まれていた。
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そのとき──
中継用スピーカーが、機械音を立てて震えた。
> 「速報。今回の放送、視聴率99.3%を記録」
> 「過去最高値です」
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モニタールームの残骸に座り込んでいた中居くんは、
血まみれの手でその音声を聞きながら、
**ゆっくりとうつむいた。**
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「……これが、正解だったのかダベッ……?」
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背後で、すすけたシャツを引きずりながら立ち上がった松本が、
ガタガタと震えながら、低く呻いた。
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「助けてくれ……浜田……」
「こんなん、笑われるためにやったんか……?」
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そして──
薄暗いバックヤードの隅。
白いワンピースの女が、灰皿の前でうずくまっていた。
広末(仮)は、放心した目で空を見上げ、
口だけが、虚ろに動いていた。
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「とっても……とっても……とっても……とっても……♪」
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歌声のメロディは外れ、
言葉だけが、破片のように空気を切り裂いていた。
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──そして、切り替わる映像。
テレビの前。
リビング。
居酒屋。
カラオケボックス。
スマホ。
タブレット。
公共のスクリーン。
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**笑い転げる“視聴者たち”。**
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「やっばwwwwwあいつマジで爆死したwww」
「うんこロワ、今回クソ神回すぎwwwww」
「ヨウタwwwwワンチャン童貞のまま四散wwww」
「正義厨ざまあwwww」
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**安全圏からのSNS叱咤。**
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「だから言ったろ、爆破系は最後に来るって」
「これ見て感動してるやつきしょい」
「“考えさせられた”とか言う奴、脳死視聴者」
「“NHKがやるべき放送”とかマジ言ってるやつ居て草」
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──そして、最後の画面に現れる**“観ていた誰か”**。
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**あなたも視聴者の一人だ**
【DIE便バトルロワイヤル 終】
DIE便バトルロワイヤル @nyapsody
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