オブジェクトネーム:『㌿㍇㌪【㎳.㌒㌛・㌦㌧】ヲ☓☓ノ㌥ョウヵ? ㌳:㌉㍄・bf』
涙目とも
管理人室:ようこそ『ディスオーダーズマンション』へ
1999年7月28日、日本標準時14時31分26秒。
日本を中心とした世界各地で、一般的にワームホールと呼ばれる亜トンネル空間が出現し、同時に消失を確認。
ワームホールの物体移動により、多元宇宙の法則を持った異常存在、異常物体、異常現象が出現。
同時期に出土した現代英語で記された石碑の情報から、現実を否定する未確認存在のことを今後より、『ディスオーダー』と呼称する。
「ハァ、ハァッ!? 死にたくねえ!!」
雪のようにコンコンと降りしきる、数多の煤塵に包まれて、必死に自らの生存を慟哭する者がいた。
何があったのかだなんて考えたく無いだろうし、信じたくも無いだろう。しかし彼の防護スーツに取り付けられた防護カメラが、非常な現実をはっきりと捉えていた。
———全てあの化け物に吸い込まれてしまった。
人も、建物も、車も。
街路樹や電柱、誇張表現されているピザ屋の広告看板まで全て、アイツに巻き込まれたかと思うと、触れた端から蒸発して、皆全部何も変わらない灰になって街だった場所を塗り尽くす。
そうでなかった者もその殆どが物言わぬ遺骸に下げ変わり、奴から発せられている規格外の放射熱量でゆっくりとローストされていった。融点の低い脂肪から溶けて滴り落ち、道路だった場所を油の川へと変えてゆく。
すでに防護スーツに装備された冷却機能の上限を上回っており、穴という穴から滲み出る己の体液で蒸し焼きになっている。彼の心境は思考が曖昧で、もういっそのこと何もわからぬまま終わらせて欲しいと、何が起こっているのか分からぬままただこの苦しみから助けてほしいと懇願している。
———だが火の鳥がそれを許さない。
「———うわあぁああァアアァ!!!」
人由来の脂で、手袋がテカテカと光沢を持つ。
超高温の熱を持ったソレから、仲間がどれだけの苦しみを受けて死んだのかを嫌でも知らされる。
「神よ、天にまします我らが神よッ! どうしてこのような試練を我々に課したのですかァァァ??!!」
そう叫ぶのが限界だったのか、胸元のカメラがゆっくりと地面に近づき、熱で融解し人間由来の脂と混ざり合ったアスファルトに押し当てられたところで、映像が途切れた。
◇◇◇◇◇
「———以上が、アメリカ合衆国のとある街に降り立った『
「これは、なんと言ったらいいか……」
「中々、辛いものがありますな……」
会議室で閲覧していた者たちは、その凄惨な光景に何も言うことが出来ず、口元を手で抑えるのが精一杯だった。
「映像の主は、彼は亡くなったのですか?」
「『不死鳥』を入居させたのち、遺体を確認し映像記録を回収しました」
「やはり……あの鳥型の化け物に」
「いえ、状況証拠から察するに地面に溜まった油が加速度的に広がった熱で自然発火、防護スーツの耐性を超えて焼死に至ったと推測されております」
「ジーザス……」
祈りの言葉と共に、各々の信じるやり方で大義を果たした記録の彼らに敬意を表し、健やかなる来世を祈る。
その行動に科学的根拠や動的価値は全くもって存在せず、時間経過によってこの映像以上の惨劇が各地で発生するかもしれない現状では、思考を停止してただ祈る行動は現実逃避以外の何にでも無い。
それでもこの時間だけは。現代科学や物理法則からかけ離れた事象が存在するという脳の処理能力を超えた情報の数々を認知し、自分なりに解釈し共有できる状態になるその時までは。
炎に巻かれた偉大なる先人を弔う事が許されるのではないか。
「……しかし、何故ディスオーダーは人間を襲ったのでしょうか?」
「捕食して栄養とするわけでも無い、かと言って自らの縄張りに選んだ訳でも無いとなると、人間に対して恨みがあるとしか……」
「情報が足りすぎている、一度整理しないと会議にすらならない」
進行しているのかわからない、要領を得ない意見の出し合いが始まった。しかし今までこんな非現実的な問題に直面した経験は誰一人として無かったのだ、この場が混乱と混沌と混然で満ちるのは至極当然と言って良いだろう。
その時、誰も上げなかった意見が会議室の端から飛び出した。
「そんなの決まっているでしょう、偶々ですよ」
ディスオーダーの出自と目的を考えるこの場に新たな発言者が入室する。彼は揃っている役員の顔を順番に眺めると、一層鋭く目を細めてからスクリーンの横に立った。
「た、たまたま?」
「そう、偶々です。偶々、偶然、何の因果も無く運命に導かれた訳でも無く、この街に発生してしまったばかりに一つの街を吹き飛ばし死者数約2万人に及ぶ虐殺の限りを尽くしてしまった、実に哀れな死にたがり。それが奴の正体ですよ」
突如現れて珍妙な発言をした男性の正体その場の皆が戸惑い、悩んでいると席に座っていた初老の男性から答えが出た。
「———成程、あなた超心理学の人間ですね?」
「ええ。仰る通り、超心理学研究所所長のアフトン・カガミと申します」
「日夜、ありもしない物理学のバグを探す変人集団。皆さん、お手並み拝見といきましょう」
男性からの促しに『アフトン』と名乗った男は軽く頭を下げ、より一層目つきを尖らせてから話を続ける。
「我々が呼称した『死狂いの不死鳥』という名前の通り、この生物は神話に登場する
伝説によると、『自らの火で燃え尽き、その灰から復活する』……故に不死鳥。今回の出来事はそのサイクルの燃え尽きるという段階で起こった災害です」
「つまり、今は灰の状態、もしくは幼体だから捕獲出来たということでしょうか?」
役員の一人から疑問が飛び出る。確かに安全に捕獲するにはそのタイミングでしかあり得ないだろうと皆が納得した後、アフトンの口から違う事実が告げられた。
「いいえ。周囲を極めて融解点の高い金属、タングステンの檻で密閉状態にすることで捕獲に成功しています」
「何故……? いや、今その疑問を出すのは違いますね、そんな事どうでも良い。それなら我々が介入できる場所でさっさと灰にしてしまいましょう」
正体の推測が付いているのなら、一見無謀と思える状況下での収容。そんな暴挙に出た理由は今考えることでは無いと優先順位をつけた役員から、当然と言える実行計画が浮かび上がる。
「結論を述べると、それは不可能です」
「な、なぜ!?」
解決法………いやら再び年老いて焼却段階に至るまでの先延ばしに過ぎないが、少なくとも現時点では最善と言える方法を否定され、会議室に少しの動揺が満ちる。
「……理由を聞いても?」
「はい、恐らく『不死鳥』はこの宇宙の法則では灰になる温度まで到達出来ないと考えられています」
「それはどう言う、ことでしょうか?」
「簡単な話ですよ………」
「呼吸を必要としていないんですよ、あの鳥は」
「呼吸を………?」
「ええ。自身が発生させた炎によって、密閉空間内の酸素が限りなく薄い状態にあるというのに、何故か活動できている」
「それは不思議に思いますが……」
「———ここからはあくまでも考察です」
『飛躍した考えとして処理していただいても構いません』と前置きを置いた後、深い息を吐き出してから自身の考察を淡々と伝える。
「奴は———酸素が存在しない世界から来た」
「!!」
「火の燃焼に空気は必要無く、発生させるエネルギーがあれば宇宙空間のような真空でも灰になる事ができる。空気が無ければ熱が伝わらない、餌場の保存のため基本的に宇宙空間で転生し今回もそうしたところで—————今回の
———考察と捨て置くには情報が足りない。
「運悪く、転送先は空気が存在する地上でエサ候補となる人間の巣窟………しかし同時に運が良かった。この世界の法則は自分がいた宇宙とはまるで異なるのだから」
———世迷言と否定するには経験が足りない。
「映像で起こった『不死鳥』に吸い込まれた現象、あれば急激に酸素が不足した事による『バックドラフト現象』が屋外で発生したためです」
「時間が経つに比例して現地の熱は増加していく。それは油が自然発火する温度を超えても変わらず、それは人類が生存可能な領域を超過し地球を滅ぼすまで止まらない。世界中の酸素をかき集めても生産する植物類が絶滅し再び転生する時に量が足りるのかわからないが、いずれ絶対に酸素が尽きる」
「そうなったらお互いにもうお終いでしょう。年老いた体で不完全に身を焦がし来るはずのない自らの死を望む。故に………
———『死狂いの不死鳥』」
2079年7月2日、日本標準時12時00分30秒。
「まだ、時間は残っている。石板に記されたタイムリミット、つまりディスオーダーたちが本格的に活動を開始する80年後までに奴らを管理し沈静化させる組織を設立させる」
世界政府は
「既に1人の友好的なディスオーダーからの協力を確約しています。彼女以外にもきっと世界を探せばいるでしょう、我々人類の益となり地球を救う足掛かりとなってくれる存在が! 彼彼女らは我々の良き隣人になれる!!」
『創設者アフトン』の意向に従い、この宇宙の
「私にも家族が、娘がいる………! 今の我々には関係無いかもしれない、でも未来を守るために過去の我々が使い潰せる
『過去を消費し、
———ようこそ『
「そして……ようこそ、俺の元に」
古びたマンションの一室を想起させる場所で、彼女は分厚い本のある箇所にお手製と思われる栞を挟み込む。
表紙に書かれているのはタイトルだろうか……しかし我々には文字化けしたようにしか見えず、奇妙なことにその形すらも数秒後には全く別の文体に変わってしまう。
———識別番号:e-001
金と呼ぶには白い白金の髪を持ち、乳白色のシミを知らない透き通る肌に沿って、中世の貴婦人を想起させる絹色のシャツに深緑色のスカートを纏った美少女。
———
しかし狂気を感じさせるほどに開かれた瞳孔を持ち朱を纏う両眼が、彼女をただの人では無く相容れない存在であることを表していた。
オブジェクトネーム:『㌿㍇㌪【㎳.㌒㌛・㌦㌧】ヲ☓☓ノ㌥ョウヵ? ㌳:㌉㍄・bf』
ようこそ……
「———さあ、ここからがゲームのスタートだ。そうなんだろ? アフトンの娘」
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『Disorder's Mansion』非公式攻略wiki
『過去を消費し、
当サイトは『LIpsal CAmpus original』開発のゲームである「ディスオーダーズマンション」の非公式攻略Wikipediaです。
※注意※
この記事はネタバレを含む可能性があります。もし内容を知らないようであれば、このページの一つ前までの内容を全て閲覧してから確認することを推奨します。
0:作品概要
以下、商品購入ページより抜粋。
1999年、7月26日。
一つ一つが世界を滅ぼす可能性を秘めている、人知を超越した『
あまりにも強大な力を制御するため、
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