第33話 メルとデート

「ん、この時を待ってた」


「ごめん、あんな話をしておいて結構待たせちゃったな」


「別にいい、学生は勉強が仕事だからお姉ちゃんな私はそこら辺の理解がある」


「助かるよ」


 今日はメルとのデートの日だ。

 学園の勉強が忙しかったりでなかなか時間が取れなかった。

 エミエラ以外とデートするなんて思っても居なかったので緊張している。


「じゃ、こっち、今日は私がエスコートしてあげる」


「あ、ありがとう」


「……緊張してる?」


「まあそれなりには」


「ふふ、手を貸してあげる」


「ありがとう」


 ショートパンツ、へそ出しの上着に外套と露出度が高いのか低いのか分からない服にドキドキしながらも差し出された手を握ると冷んやりとスベスベしていて気持ち良い。


「まずはここ」


「お菓子屋さんか?」


「ん、新作が出たらしい」


「……」


「意外?」


「いや? 随分可愛らしいところもあるんだなと」


「私は可愛い、これは事実」


 まあ、絶対的な自信に相応しい顔をしているとは思うが自信に満ち溢れた胸は言いたくないが絶壁だ。


「失礼なことを考えてる」


「可愛いなと」


「胸が?」


「うん……あ」


「カイルは後でお仕置、今はケーキに免じて先延ばしにしてあげる」


 やらかしたぁぁぁぁ

 デートで貧乳煽りは流石にまずいぞ。

 あれは結構ちゃんとキレてる、証拠に鉄製のフォークが綺麗に折れてる。

 あ、店員さんごめんなさい怖がらないで〜。


「カイル、一口ちょうだい」


「ん? どうぞ」


「……」


「あぁ……あーん」


「美味しい、お返し、あーん」


「美味しいな」


 メルは無表情で声色が変わらない事が多い。

 言葉でこそ俺を煽り散らかしているが抑揚はあんまりなかったりする。

 だが、今日はちょっと違う気がする。

 不意に少しニコッとしたり、声が低くなったり高くなったりといつもよりも格段に可愛く見える。


「ん、次」


「次はどこに行くんだ?」


「買い物」


「買い物……か」


 女の子の買い物か……

 異世界の女の子も漏れなく買い物が長い。

 これはエミエラで実証済みだ。

 メルは案外サバサバしてるしすぐに終わるのかもしれない。


「ん、普段はパッと決めるでも今日は無理かも」


「どうしてだ?」


「言わなきゃ分かんない?」


「……一応聞いても?」


「あなたが相手だから…………ドキッとした?」


「あぁ、うん、だいぶかな」


 何となくそういう答えが帰ってくるのだろうと思っていたが……

 なんだよ、なんだよこれ……可愛すぎるじゃん!!


「カイル、これとこれどっちがいい」


「うーん、左かな」


「カイルは露出がない方が好き……童貞?」


「そ、そうだけど……悪いかよ」


「私が貰ってあげようか?」


「結構だ」


「そのうちエミエラちゃんと一緒に頂いていくから問題ない」


 はは、冗談に聞こえないのがなんともな……

 ま、そんなことは置いておいてメルに選んだのは白のゆったりとした上着に黒のロングスカートだ。

 雰囲気は一気にお淑やかになったし何処かのご令嬢のようだ。


「じゃあ、これとこれ」


「っ!? 下着じゃねぇか!!」


「ん、必要、好みを知りたい」


「……」


「こっち? こっち? ……これを買う」


 なぜバレたし……

 おい、無言で俺好みのちょっと大人っぽい黒の下着を手に取るんじゃないやめろぉぉぉ!!


「うーん、もう少しカイル好みの服を増やす」


「嬉しいけどあんまり派手なのは俺の心臓が持たないんだが」


「ん、童貞カイルに配慮してあげる」


 そういってメルは服を探しに店の奥の方へと消えてしまった。

 にしても、この店はかなり品揃えがいいらしくメルはあっちに行ったりこっちに来たりと慌ただしく動いている。


「なぁ、メルわざとだよな?」


「ん? ズボンは短ければ短いほど動きやすい」


「それが刺激が強いっていうんだよ……」


「どんなに動いても肝心なところは見えない」


「そういう事じゃないんだよ……」


「もしかしてカイル……脚フェチ?」


「ち、違う、よ」


 それからというもの持ってくるものが全てが足が拝めるくらいの短さのものを持ってくるようになってしまった。

 スカートならば見えるか見えないかの絶対領域、スボンならばガッツリと見える健康的な柔らかそうな太もも。

 どちらを取っても魅力的だ。


「私が買う」


「これくらい出させて欲しいな、あくまでデートなんだし、甲斐性を見せないとね」


「ん、わかった、帰ったらすぐに着てあげる」


 何を分かったのだろうか。

 まあ、この世界じゃ俺も貴族なので流石に女の子にお金を出させるのはまずい。

 大量のお小遣いはあるが自分で稼ぐ方法も考えなければ胸を張って奢れるようになれない。

 至急、お金を集める方法を考えないとな。

 それにしてもニコッと笑うメルには気を抜くと心を奪われてしまいそうだ。

 正直、メルがなんで俺の事が好きなのかさえ分かればすぐにでも俺のお嫁さんになってくれと言えるんだが……


「次はちょっと街の外に行く」


「分かったよ」


 こっちは西の門……あるものといえばずっと先に俺の実家である辺境伯領があるくらいだ。

 定期的に王国軍がモンスターを討伐しているが街道から離れれば危険だらけ。

 まあ、メルが居れば大丈夫だろう。


「モンスター狩りデート」


「はは、物騒だな」


「夫婦の共同作業ついでに街道の安全確保」


「な、なぁ、メル、そのポーションって……」


「モンスター寄せのポーション、私は高ランクだから使用許可を持ってる、ここら辺のモンスターならカイルでも生き残れる」


 ドッドッドッドッドッドッ


 すっごい嫌な予感が……


 ┈┈┈┈┈┈

 ┈┈┈┈

 ┈┈


「ふぅ、はぁ、し、しぬ」


「ん、お疲れ様」


 辺りには死体が散乱しており、メルは一切息切れすらしていないのに俺はもう立っているのもやっとだ。

 デートをするだけでこんな地獄絵図になるなんてモンスター達には少し悪いことをした気がする。


「カイル、私はあなたが好き」


「……無粋かもしれないんだけど、どうして俺なんだ?」


「居心地が良くてからかうといい反応をするから」


「……それだけ?」


「ん、居心地がいい人は大切、生まれてから100年と少し家族以外で背中を預けれる人も一緒にいて楽しい人と思える人もなかなかいなかった、だから大切、離したくない」


「そ、そうか……」


 そうだ……メルはエルフでこの見た目でも俺よりずっと年上。

 それに女の子に離したくないとまで言われて答えない男が居るのか!? いや、居ない!!


「メルに背中を安心して預けてもらえるくらいには強くなるよ、メルの夫として」


「ん、きっとなれる、ならなかったら女の子に守られる男の子としてずっと可愛がってあげる」


「勘弁してくれ……」


 また強くなる理由が増えたけど悪い気分じゃない。


「なぁ、メル……この死体どうすんの?」


「あ、またギルドに怒られる……あ・な・た♡」


「ハッハッハッ、気が早いな〜メルは、まだエミエラにも両親にも言ってないのに」


「……捨てるの? ヤることヤッたらポイなんて酷い」


「そのヤは殺のヤだろ!?」



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

是非、♡や☆、フォローで応援して頂けると嬉しいです。モチベにも繋がるので……
















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る