第13話 イチャつきは程々に

「いってて」


 酷い頭痛と足の骨が折れたような痛みが無くなっており足も違和感なく動いている気がする。

 それに起き上がりたくないくらい心地いい枕のうえに寝ている気がする。


「は〜、気持ちいいずっと寝てたい」


「そ、そのカイル様、大変嬉しいのですがお義母様の前ですし///」


「え、あ……」


 本日二度目の大恥だ。

 母親の前で婚約者の膝枕を気持ちいいと言ってしまった。

 ほら、微笑ましい目でこっちを見てるし。

 てか、父さんは母さんの膝の上で何してるんだよ、普段はカッコイイのにっ!


「えへへ、カイル様? もう少し膝の上に居てくれても良いんですよ?」


「だ、大丈夫、もうこの通り元気だからさ」


「……」


「わ、分かった、2人の時にまたゆっくりお願いするよ」


「はいっ!」


 膝枕を断ると一気に落ち込んだような顔をして、2人の時にというと満面の笑みを浮かべてくれた。

 可愛い、可愛いけど俺が改めて膝枕をお願いするのは恥ずかしい!


「で? 父さん俺たちは合格でいいのか?」


「ん? あぁ、元から2人で挑んできた時点で合格だよ、危機的状態でも2人で力を合わせて最後まで戦えるかどうかが大事だからな」


「やりましたね、カイル様っ」


「そうだな」


 婚約も認めて貰えた事だしこれで学園までに急いで片ずけるべき問題は無くなった。

 学園までにもっとエミエラと仲良くなって強くなろう。


「頑張ろうな、エミエラ」


「えぇ、最高の妻になってみせます」


 もうなってるんだけど……小っ恥ずかしいので今は言えないけどいつか伝えるとしよう。


「アツアツだな」


「微笑ましいですね」


「「あっ……」」


 俺たちは顔を真っ赤にして寝室へと撤退した。

 本当にこれからはイチャつく時は気をつけよう……時と場合を考えるのは大切だ。


 ┈┈┈┈┈┈

 ┈┈┈┈

 ┈┈


 屋敷に来てからバタバタしていたせいでエミエラの部屋を聞きそびれていた。

 今から屋敷のメイドに聞きに行ってもいいのだがエミエラはどうやら何かを言いたいようだ。


「その……せっかく結ばれることが確約されたのです、共に寝てもよろしいでしょうか」


「…………っ!」


「そ、その、期待させてしまったのでしたら謝ります、私はそのただこの喜びを現実だと理解するための時間が欲しいのです」


「わ、分かった」


 同じベットに腰をかけ、隣に座ったエミエラの体温を妙に意識してしまう。

 頬が真っ赤に染まったエミエラが俺の布団に潜り込むと俺もその後に続いて布団に入る。

 俺に背を向けていたエミエラはくるりと反転すると俺の胸あたりにピタリと張り付いた。


「カイル様の心臓の音が聞こえます」


「……恥ずかしいな」


 この部屋には俺とエミエラしかおらず、胸の中に収まったエミエラの頭が俺の顔の下でモゾモゾと動いている。


「いい匂いがするな」


「そうでしょう? カイル様にそう言って貰えると取っておきの香水の意味がありましたね」


「甘くて柔らかい、落ち着く匂い」


「くすぐったいです」


 前世では香水なんて全く興味がなかったがこの世界での香水はかなり幅広く使われているので俺も何度か使ったことがある。

 しかし、匂いがきつくて俺の好みではなかったので普段は全くつけていなかったがこの匂いは好きだ。


「カイル様……愛しています……んむっ」


「俺も……あ、愛してるよ」


 寝ている相手の寝言に愛していると言葉を返すだけでもタジタジだ。

 いつか起きているエミエラに正面切って愛していると言えるだろうか


「ふふ、聞いてしまいましたっ、おやすみないませ」


「なっ」


 まんまと嵌められたらしい。

 ニヤッとしたイタズラっぽい笑顔で俺の顔を覗き込むと顔を背けて寝てしまった。

 今度こそしっかりと寝るようだ。

 せめてもの仕返しにエミエラを抱きしめながら俺も寝ることにした。



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エミエラ視点

こ、これはどういうことですか!?

もう一度、寝たフリで出方を伺おうとしていただけなのに、気づけば後ろから抱きしめられています!!


(何を言っているか分からないと思いますがはっきり言います! ここは天国です!!)


お腹ですわ! お腹に手を添えられてます!

ふへへ、これは幸せの感触です……


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