プロローグ『ふたり、そして、わたし』

朝7時、カーテン越しの光がそっと差し込む。

静かに目を開けると、隣には柚希の寝顔。ほっぺたを少し赤くして、口をぽかんと開けている。

すぐ隣のベッドでは、彩夏が小さく丸まって眠っている。眠るときだけは、本当に天使みたいだ。


「柚希、朝だよ」

声をかけても、布団に潜るだけ。次の瞬間、「むりぃ〜…ママ今日やすみって言ってたじゃん〜」と寝言混じりに叫ぶ。

「言ってないよ。今日、遠足の日でしょ?」

その一言で、柚希の目がぱちんと開いた。


「ほんとに!? 今日!? 彩夏おきてぇ〜っ!」


バタバタと始まる朝。

彩夏はというと、まだ夢の中。「…あと10こだけねたらおきる…」

“10こだけ寝る”という表現は、彼女の定番フレーズだ。


こうして、我が家の1日は、まるでコントのような騒がしさで始まる。

でも、この賑やかさが、私にはとても愛おしい。

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