花が咲く頃

@kurodango0821

第1話

葵・花野葵(18)は、誰もが憧れるトップアイドルだ。ステージに立つその姿はまさに輝いていて、誰もが彼女の笑顔に魅了され、歌声に心を打たれていた。彼女は、ソロで活動していてその活動を通して、ファンに夢と希望を与えてきた。だが、その背後には誰にも言えない深い闇が隠されていた。


その日も、葵はステージの準備を整えていた。鏡の前でヘアメイクを終えた彼女は、スタッフに向けていつものように笑顔を振りまく。



だが、その笑顔の裏には、誰にも見せられない痛みがあった。葵は密かに「花の病」と呼ばれる奇病にかかっていた。この病は、彼女の体を次第に花のように変えていき、最終的には命を奪うものだった。


医者からは余命半年と告げられ、葵はその運命を受け入れながらも、決してその事実を公にすることはなかった。アイドルとしての使命、そして何よりもファンのために笑顔でいることが、彼女の唯一の生きる力だった。

葵が病に苦しみながらもステージで輝き続ける中、偶然にも彼女は翔・黒瀬翔(18)と再開することになる。2人は幼馴染だった。


翔は病院で働く若き医師で、ある日、葵は体の調子がおかしいと思い病院に足を運んだ。


診察室の扉が静かに開き、白衣を着た翔が顔を出した。カルテを見ながら顔を上げた彼は、目の前に立つ人物に思わず目を見開いた。


「……葵?」


「あれ? 先生って……もしかして、翔くん?」



「久しぶりだね。こんなところで会うなんて、びっくりしちゃった。」


「ほんとに……でも、どうしたの? どこか調子悪いの?」


葵は一瞬だけ目を伏せ、すぐにいつもの明るい笑顔を浮かべる。


「ううん、ちょっと疲れがたまってただけ。すぐに元気になるよ。」

 

そう言って笑う葵の瞳は、どこか遠くを見ていた。翔はその笑顔に違和感を覚えたが、すぐに診察モードに切り替える。


「一応、血液検査と画像検査をしておこうか。最近、体調崩す人も多いからね。」


「ふふっ、先生の顔になってる。翔くん、かっこよくなったね。」


「からかわないで。医者としてちゃんと診ないと、あとで怒られちゃうからさ。」


和やかに交わされる会話。でも翔の胸には、得体の知れないざわつきが残っていた。

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