第9話闇の精霊と光のマダムですわ〜
魔族の領地は、闇に覆われた荒野だった。黒い霧が漂い、枯れた木々が不気味に揺れる。中央にはベヒモスの祭壇を擁する要塞がそびえ、赤い目のような光が脈打つ。アリス=ガーランド、ルカ・エデンシア、ヴィネ女王、ドドルは、四精霊(フェニックス、シルフ、ウンディーネ、タイタン)の力を携え、決戦の地に立った。アリスの白いドレスは慈愛の炎に輝き、アリスの黒髪ロングの美貌は希望の星を思わせた。
要塞の門前で、モルドが待ち構えていた。黒いローブに身を包み、闇の魔力を帯びた剣を手に、狡猾な笑みを浮かべる。背後には闇の精霊ベヒモス――巨大な黒い幻獣、翼と霧の体、赤い目が世界を睨む。魔族の戦士と闇の魔獣が咆哮し、荒野を埋め尽くす。
モルドが嘲るように言った。
「アリス=ガーランド、楽園の領主か。ベヒモスの闇に、貴様の炎など無力だ。世界は我々のものとなる!」
アリスは拳を構え、高笑いした。
「ふふ、モルド殿、ベヒモス殿、なんとも不作法な歓迎ですわ! マダムの拳で、闇に礼儀を教えますわ! おーっほっほ!」
ルカが扇子を振って剣を構える。
「アリス様、私の風が貴女の拳に永遠の輝きを! モルド、ベヒモスにエデンの正義を!」
ヴィネが水の槍を握り、咆哮する。
「カナンの誇り、闇に屈せぬ! ウンディーネと共に、ベヒモスを討つ!」
ドドルが土の魔力を帯び、震えながら叫ぶ。
「私、怖いけど……タイタニアの誇り、タイタンの力で、魔族を止める!」
フェニックスが心の中で呟く。
「やれやれ、アリス、ベヒモスのやつ、ただの怪物じゃねえぞ。拳でいけるか、楽しみだな」
戦闘が始まった。ベヒモスが咆哮し、闇の霧が荒野を覆う。風の精霊のような高速の闇の刃がアリスたちを襲い、土の精霊のような大地の崩壊が足場を奪う。モルドが闇の魔術で幻影を召喚し、魔族戦士を強化。アリスは慈愛の炎を纏った拳で魔獣を叩きのめし、合気道で戦士を投げ飛ばす。だが、ベヒモスの体に拳を叩き込むと、闇の霧が攻撃を吸収し、ダメージを与えられない。
「くっ、ベヒモス殿、物理攻撃無効とは厄介ですわ!」
ルカが風の剣技で闇の刃を切り裂く。
「アリス様、私の風で道を切り開く! モルドを狙いましょう!」
ヴィネが水の奔流を放ち、魔族戦士を押し流す。
「ウンディーネの加護、限界まで強化! アリス、モルドを討て!」
ドドルが大地を隆起させ、岩の壁で魔獣を封じる。
「タイタンの力、負けない! みんな、守るよ!」
だが、ベヒモスの力が圧倒的だった。闇の爆発が荒野を焼き、大地の嵐が岩の壁を粉砕。ベヒモスの傷は即座に再生し、魔族戦士は闇の加護で執拗に復活。ルカが闇の刃に胸を貫かれ、膝をつく。
「アリス様……私の風、貴女に……託す……」
ヴィネがベヒモスの闇炎に焼かれ、倒れる。
「アリス……カナンの誇り……貴女に……」
ドドルが大地を操るが、ベヒモスの大規模攻撃に押し潰される。
「アリス様……私、怖かったけど……信じてる……」
アリスは仲間たちの敗北に拳を握り締め、叫んだ。
「ルカ殿下、ヴィネ女王、ドドル殿! わたくしの拳、皆様の志を背負いますわ! モルド、ベヒモス、マダムの正義で裁きます! おーっほっほ!」
だが、ベヒモスの闇の霧がアリスを包み、拳が届かない。モルドが剣を振り、闇の波動でアリスを吹き飛ばす。彼女は地面に叩きつけられ、ドレスの裾が裂ける。フェニックスが心の中で叫ぶ。
「やれやれ、アリス、ベヒモスのやつ、物理無効はズルいぜ! どうする、拳で突き進むか?」
その時、光が荒野を照らした。白いヴェールに包まれた女神が現れる。慈愛に満ちた微笑み、黄金の瞳がアリスを見つめる。女神が静かに告げた。
「アリス=ガーランド、楽園の守護者よ。四精霊の力を結集し、光の精霊として闇に立ち向かいなさい。フェニックス、シルフ、ウンディーネ、タイタンの魂が、貴女に新たな力を与える」
シルフが風となって囁く。
「アリス、俺の自由、受け取れ!」
ウンディーネが水のように流れる。
「アリス、絆の力を、貴女に」
タイタンが大地の響きで言う。
「アリス、誇りを、共に!」
フェニックスが笑いながら叫ぶ。
「やれやれ、アリス、魔法使うなんてらしくねえけど、拳なら許すぜ! 光の精霊、ぶちかませ!」
四精霊の力がアリスに流れ込み、彼女の体が光に包まれる。慈愛の炎が白い輝きに変わり、ドレスが光のヴェールに変貌。彼女は初めて魔法の権能を得た――光の精霊「魔打武(マダム)」。アリスは拳を握り、高笑いした。
「ふふ、モルド殿、ベヒモス殿、闇の無礼、マダムの光で払いますわ! 光の拳、魔打武、ご賞味あれ! おーっほっほ!」
アリスは光の拳を振り上げる。巨大な光の拳が空を覆い、荒野を照らす。ベヒモスの闇の霧が溶け、モルドの幻影が消滅。彼女はモルドに突進し、光の拳を叩き込む。ズドン! 衝撃波が要塞を粉砕し、モルドを地面に沈める。ベヒモスが咆哮するが、光の輝きに体が崩れ、闇の精霊は消滅した。
モルドは地面に倒れ、呻く。
「アリス=ガーランド……この光、貴様の拳……私の敗北だ……」
アリスは光のヴェールを解き、微笑んだ。
「ふふ、モルド殿、闇は払いましたわ。ですが、マダムのティーテーブルは全ての方を歓迎します。ガーランド領の舞踏会、ご一緒しませんか? おーっほっほ!」
フェニックスが心の中で笑う。
「やれやれ、アリス、魔法使っても拳で締めくくるなんて、最高にマダムだぜ。舞踏会、モルドの顔が楽しみだな」
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戦いの後、アリスはルカ、ヴィネ、ドドルを救い、ガーランド領へ帰還した。ベヒモスの消滅で魔族の脅威は終わり、世界に平和が訪れた。斥候の報告では、エデン貴族の陰謀もベヒモスと連動していたことが判明し、彼らの企みは露見して収束。アリスはモルドを含む魔族を赦し、ガーランド領で盛大な舞踏会を計画した。楽園の未来は、すべての民の絆で輝いていた。
(第10章へ続く)
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