【長編】ご主人様は、ラスボス系幼女~元・ハイスぺ勝ち組♂は快適ペットライフの夢を見る~【ファンタジー/ダンジョン・レベリング】※不定期更新&エタの可能性有り※

桜野うさ

第1話 ほんとの自分、デビュー☆~とあるアラフィフ♂の赤裸々な休日(エブリデイ)~

 みなさんこんにちは。

 元サラリーマンの犬飼勝也いぬかいかつやです。


 年齢は35歳。


 身長は180センチあるし、長いことスポーツやっていたから結構体には自信がある。


 そんなおれは今、全裸で四つん這いにされています!


 身に付けている物といえば真っ赤な首輪のみ。


 あ、あとやたらファンシーなピンクのリボン。

 縁にフリルとかついてる奴。



 大事な部分をひとつも隠せていないどころか、ポージングのせいでケツの毛まで晒している状態。


 休日の昼の自然公園という人通りの多い場所で。


 こんなの、普通だったら人生終わる。

 考えるだけで腰の辺りがむずむずした。


 実際のところ、おれの人生は一回終わってるんだけど。



 おれの大事なひとを紹介しておこう。

 リードを引いている女の子に目を向けた。


 彼女はメルちゃん様。

 6歳。


 おれのご主人様だ。



 メルちゃん様は何かを見つけたのか、突然わぁっと駆けだした。


 いきなり強くリードを引かれたので首が苦しくて仕方なかったが、ご主人様に与えられる苦しみはむしろご褒美だ。


 やがて広い池にたどり着いた。


「おさなかさんいるかなぁ」


 メルちゃん様があどけない声でおれに尋ねた。

 いつ聞いても可愛らしいエンジェルボイスだ。


 おれは池を覗き込んだ。


 揺れる水面に魚影は見つからなかった。


 代わりに、白くてふわふわしたプリティーな子犬が写っていた。

 頭にやたらファンシーなピンクのリボンをつけている。


 縁にフリルとかついてる奴。


 それから真っ赤な赤い首輪。


 これが新しいおれの姿だ。

『こっち』の世界での。



 赤い目をした銀色の魚が池の中で飛び跳ねた。


「あっ! おさかなさん!」


 胸びれの部分が透明で、天使の羽根みたいになっている。

 この自然公園で飼われているものらしく、羽根には切込みが入れられていた。


 あのモンスターは空を飛べるらしいし、触ろうとすると警戒して火を噴く。


 なのにメルちゃん様は魚に手を伸ばそうとした。

 ご主人様はまだ子どもだから好奇心を押さえられないのだ。


 おれが守らねば!

 ぎゅっとリードを引いた。


「邪魔しないでよぉ、マオー」


 怒っている姿も可愛いね!

 おっと、絆されてはいけない。


 おれはぐいぐいと力を込めて――だが、ご主人様に怪我をさせないように気を使って――、リードを引っ張り続けた。

 安全なところに戻るのだ。


「メル!」


 黒髪の美青年が駆け寄って来た。

 ご主人様のパパさんだ。


「ファイアーフィッシュの側には行くなって言っただろ」

「だ、だってぇ、面白そうだったんだもん」

「面白そうでも危険な場所には近づくんじゃないぞ」

「仕方ないでしょ、メルはパパの子どもなんだから!」


 ご主人様にそう言われて、パパさんは困ったように微笑んだ。


 パパさんは昔、冒険者として各地を巡っていたらしい。

 危険な場所にもたくさん赴いた。


 冒険している内に魔王を倒して勇者となった。

 だが、『結果』を利用して国の要職に就くこともなく、現在は隠居している。


「メルを守ろうとしてくれてありがとう、ポチ」


 パパさんはおれの頭を撫でた。

 傷だらけの無骨な手で撫でられても嬉しくない。


「ポチじゃなくてマオーなの!」

「その名前は賛成できないなぁ」

「格好いいでしょ、マオー」

「せめて勇者にしてくれない?」

「ユウシャって格好よくないよぉ」

「パパはショックだよ……」


 メルちゃん様は6歳の身でありながら自分を持っているし、大人の男相手にしっかり自己主張している。

 将来いい女王様になるだろうと思うと今から楽しみだ。


「マオー、よだれ垂らしてる。お腹空いたの?」


 あれこれ妄想していたら生理現象の体液が零れていたらしい。


「メルもそろそろお腹空いたよね。おうち帰ってご飯にしよっか」

「うん!」

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