終わった世界とクズ男

@yuno1109

第1話 崩壊都市にようこそ


 人間において最強の武器は、外に出ない事である。

 人間は、パソコン。飯、水、WiFi、ベットさえあれば生きていける。元々引きこもりで外に出ることは無かったが、一人暮らしでも競馬とかで生計はたてられたし、ご近所付き合い等思ったよりし無かった。

 今の世はネットニュースで見るしかない。なんか最近、近くに小惑星が接近するという話は見た。まぁそれも、俺には関係の無い話だ。だって、俺には彼女なんか居ないからね。

 でも、そんな俺にも特技が一つだけあった。それは、「観察眼」だ。

 先程も言ったが、俺は競馬で稼いでいる。それは、適当に買うのではなく、馬の状態を見て判断する。俺は画面からでもその馬が調か分かる。だから勝てる。それでいい、金なんて汚ぇもクソもあるか。1円は1円なんだよ。付加価値なんてねぇ。

 そんな中だった。千葉県、12月31日。夜の九時半、


「停電?」


 いきなり全ての電源が落ちた。どのスイッチを押しても、何も機能しない。全ての機械がいきなりショートすることなど有り得ない。であれは停電だろう。

 だが、一つ問題があった。それはこの停電が俺の部屋の問題か、このマンションの問題か分からないという点だ。別に聞けばいいじゃんと思うか? 残念だが、俺にその勇気なんて無い。今までご近所と話した事なんて、挨拶回りぐらいしか無いんだよ。

 ただ、俺はポジティブだった。夜だったし、予定も無かったから、寝て朝起きたら停電は解決していると思った。


 ◇1月1日


 次の日…何も問題は解決していなかった。停電は変わらない。カーテンは締切っているので、朝なのは分かる。それだけだ。相変わらずパソコンはつかない。スマホは、充電し忘れていておじゃんだ。


「寝るか」


 俺はある考えに至った。というか思い出した。今日が新年という事に。つまりは、年末休みだ。停電を直す会社も今はお休みということ。であれば納得出来る。つまり1月の4日位まで待てば、何とかなるという事だ。

 幸い、食料もある。風呂は…何とかなるだろ。幸い水とガスは止まってないから、お湯作って入る。

 ケ・セラ・セラだ。


 ◇1月2日


 昨日と同じ状況。と言いたいが、少し違和感がある。

 何故か、ヘリがめちゃくちゃ飛んでいる。ベッドから出たくないので、音しか聞いてないが多い気がする。まぁ年始のマラソンとかだろ。

 ……冷凍庫の中身は全滅した。アイスが食えなくなったのは、キツイな。


 ◇1月3日


 ついにガスが止まった。お湯を用意しようとしたら、火がつかない。マジかと思った。

 それだけじゃない。半日後に水も止まった。

 …待て、これ思ったよりやばい状況か? 俺のマンションの問題と思っていたが、電気ガス水道止まる事があるか?

 カーテンは締切っていて、外は見ていない。ご近所さんも、俺に興味が無いからじゃなく、何かあったから誰も訪ねてこないのだとしたら?


「……っ!? カーテン開け――嘘でしょ?」


 カーテンを開けた。窓を開ける。少し開けにくかった。まるで、側溝に何かが詰まっている感覚。

 力を振り絞って、窓を開ける。冷たい冷気が入ってきた。そしてそれと同時に、も。


「何これ?」


 俺は、しゃがんでその水晶に触る。

 宝石のおもちゃにありそうな、サファイアみたいな石だった。

 中は透明だが、それにしては重い。落としてみると金属音が鳴った為、物質であることは確か。

 火で炙ってみるか? って火は無いんだった。


 てか状況を確認しよう。冷気と青い水晶。ガスや水道が止まった状況を引き起こしたのは、これでは無い。見たら分かる。

 観察眼とか、そういう問題じゃない。てか、よく気づかなかったな俺。


「…原因、あれだよなぁ、どう見ても」


 大きな氷柱があった。

 それは、幻想世界に入ってしまったかの様に、この世界全体が、氷のような物質に覆われている。文字通りの銀世界だ。空中には、ダイヤモンドダストのように、キラキラと氷が待っており、それが1層終末を起草させる。

 俺は勘違いをしていた。俺は世界に見捨てられているのだと。だが、実際は違った。世界に見捨てられたのは、この世界の人間全てだった。

 俺は今を持って理解する。日本は滅んだのだと。


 ◇◇◇◇◇◇◇◆


「さて、これからどうするか」


 先ず知りたいのが、世界の状況。

 それと、なにが原因でこうなったのか。

 ……仕方ない。外に出るか、とりあえずコンビニに行こう。飯と、それから…リチウム充電器とかあるかな。それに、


「ちょっと氷も見てみたい」


 外に出る。

 ドアノブは固く、開けるのに苦労したが蹴って、何とか出れた。開けた瞬間、さっきと同じように冷気と氷の粒が、俺を襲う。厚着をしているが、それでも寒い。

 ジャリジャリと、道路の真ん中を歩く。信号も、電灯も機能していない。白い息が、空に昇っていくが、氷は溶ける気配は無かった。

 そして、人がいない。避難する人も、助ける人も、宛もなくさまよう人ですら存在していなかった。

 避難したのか、死んだのか、それはまだ分からないが、前者であることを願いたい。

 それにしても――


「本当に、世界は滅んだんだな 」


 そんな中、コンビニが見えてきた。そしてその横に、でっかい氷柱。東京方面に見える、富士山レベルの氷柱に比べたら、タケノコぐらいのサイズだが、それでも二階建ての家ぐらいはあった。


「冷た」


 触ると冷たかった。コンコンと叩くと、氷の音がする。

 だが、1つ氷とは違う特徴があった。それは「溶けない」という点だ。

 触っても、息を吐いても、擦っても溶けやしない。それどころか、ヒビすら入らない。

 まるで、氷の性質だけ真似ている、違う物質のようだった。

 とりあえず――コンビニに行く、


「動くな」


 1月3日。どうやら世界は、俺の思っている以上に、無法地帯になっているようです。



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